第三期のもう一つの主要課題は、大学教育の見直し作業です。この課題は戦後大学がこれまで累積させてきたもので、この‘つけ’が今どうしようもない段階にきているということです。問題は大学の量的拡大や大衆化によって学生の質は変わっているのに、大学教員の指導方法は伝統的な大学の残像を引きずっているということです。この問題は少子化現象によって一層鮮明になりました。学生の学力低下、学習意欲減退、心的不適応、授業中の私語などはよく知られた症候群ですが、これにどう対応してよいか教員は戸惑っているのが実情です。
 このままでは大学教育が全国的にみて崩壊の危機に立たされています。現状を打開しなければならないことは誰の目にも明らかです。このようなことから、平成15年度の学長の重点事項の主要項目の一つに「学生指導態勢の見直し−教育改革に向けて−」を取り上げていますが、成果らしいものはまだ見えません。問題がそれだけ根深く時間がかかると思いますが、それにしても思いは募るばかりです。これまで教育改革の工程表のアウトラインについて試論を提示したこともあります。今求められるのはコーディネーターですが、これは一人ではなくテーマの数だけ必要なわけで、人待ちでは自分が遅れるばかりといえそうです。教員一人一人ではなかなか思うようにいかないので、組織的な取り組みが必要ですが、それは全学的なものから学科レベルのもの、また少人数グループによるものなど幾つかの型が考えられます。全学的なレベルでは、本学にはFD委員会があります。ことの重要性と緊急性に鑑み、それぞれ積極的に取り組んだらどうでしょうか。
 手始めとして、私は個人的にあるプランを立てています。それは「授業の達人名鑑」の編集です。人はみな、学校教育を終了するまでに多くの教師に出会ってきました。その中には可愛がられ、世話になり、感動し、そしてその後の人生でも尊敬し、印象に残り続ける先生がいるはずです。教え方の上手な先生の授業方法を細かく分析することを考えているわけです。
 世の中には話し上手で人間的にも魅力があり、人目を引きつけるような人がいて、生来教員を天職として宿命づけられたような恵まれた方がいます。真似ようにも超えられないものがあり羨ましい限りですが、そのような人はごく少数です。では大多数の教員はどうすればよいか。
 「私学経営」(平成12年10月)に京都大学海洋物理学教授の話が紹介されていて、興味深い。この教授は話が上手いというような人ではなかったが、学生や若手研究者から評判が良かったという。授業の方法はというと、「これは未だわかっていない。この問題はわからない。」というような調子だったそうです。この話を紹介している方によると、最先端のところを学生とともに学ぶという姿勢が学生を引きつけたのではないかというわけです。話が上手な方がその逆よりいいに決まっています。しかし、それは決め手ではない。もちろん、話下手でも失望するにはおよびません。
 授業の妙味というのがあるように思います。だから授業研究の意義があるのでしょう。上記の例でもそうですが、共通項としては教材に精通していること、授業に情熱を注ぎ半端な姿勢を見せないことが挙げられよう。反省することばかりですが、後戻りもできないし、前向きにがんばるしかありません。
学 長 波 平 勇 夫
 新年おめでとうございます。2004年の年頭に当たり、高等教育の行方を予測しつつ本学の進むべき方向について考えてみたいと思います。
 戦後日本の高等教育の転換期は、(1)戦後の民主化および教育機会均等による高等教育の拡大、(2)高度経済成長期以降の高等教育の大衆化、そして(3)平成4年以降の大学設置基準の大綱化に伴う大学改革によって区分されよう。今われわれは第三期にあるわけですが、「大学の危機」に象徴されるようにここでの試練は大変厳しく、学内の合意形成も容易ではありません。しかし多くの協力で、本学はこの難関を通過しつつあります。大学院研究科や学部学科の新設と改組転換は、この段階での避けられない課題であったし、平成7年以降おおむね順調に推移してきたとみてよいと思います。
 
後援会会長 池田 光男

 皆さん、新年おめでとうございます。
 近年、国は、戦後の我が国を支えてきた政治、行政、経済などの基本的な制度を抜本的に改革する施策を強力に推進しております。
 その一環である教育制度についても教育基本法の見直し、学校経営の規制緩和など構造的な改革が進められています。特に、新年度から実施される国立大学の独立行政法人化や認証評価機関による第三者評価の義務付けとその公表は、かつて「象牙の塔」と評され、俗世間から遊離しているとみられていた大学に、大きな変革を迫るものと言えます。
 幸いに、本学はこのような時代の潮流を見据え、絶えず「個性重視」と「適性発見」に向けたカリキュラムの見直し、学部学科の改編、大学院研究科の設置等による教育研究内容の質的向上、経営及び事務組織の再編による経営の効率化、施設設備、備品の整備拡充等本学の改革を積極的に進めてきました。その結果、本学は、沖縄の私立大学の雄としての地歩を築くまでに発展してきました。
 新しい年において、本学が更に一体となって、なお一層の発展に寄与されんことを祈念して、年頭のごあいさつといたします。
 
 
校友会会長 岸本 恵常
 新年おめでとうございます。
 本年2月に本校友会は創立30周年の節目を迎えます。
 1974年2月23日に本校友会は設立され、母校と共に発展してきました。ここに至るまでには、校友先輩方のご努力と大学当局をはじめ多くの関係者の皆様のご支援がありました。
 本会の30年の歴史の節目に立って、その来し方を振り返り、築かれた歴史を礎に新たな未来への出発点として、意義ある節目にしなければならないと強く望むものであります。
 連綿と流れる歳月の一時点一時点が線となって、歴史を織りなしていきます。容赦なく過ぎ去る「時」に価値を付加して重みをつけた史実を次の節目、次の世代につげることが「今」を担う私たちの役割だと考えます。時は移り、人は変わっても校友会組織は有機的に機能し続けます。一般社会もまた然りです。若い学生の皆さんは未来の社会を担い、また歴史を築く使命を負っています。歴史は単なる時の経過の結果ではありません。価値ある史実として、後世に受け入れられるものでなければなりません。未来は不確実であるが、過去は厳然たる事実として残り、評価を受け、価値あるものは歴史として後世に受け継がれていきます。不確実な未来を価値あるものにするために、今、何をしなければならないか、よく考え、実行しなければなりません。個々人の歴史も自らの努力によって決定づけられます。
 人は一生努力しなければなりません。特に若い世代の努力は人生を決定づけ、社会を左右します。人の努力は何を心のよすがにするかによって、強弱・方向性が左右されますが、私は次の漢詩に共感を覚えます。「盛年(せいねん)重ねて来らず、一日(いちじつ)再び晨(あした)なりがたし、時に及んで当(まさ)に勉励すべし、歳月は人を待たず」陶淵明(中国の詩人)。
 

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