昨年の8月13日の米軍ヘリコプター墜落事故以降、混乱極まる中で、本学は、学生や父兄及び数多くの皆 様のご理解とご支援に支えられながら、大学機能の回復、被害補償、事故原因の究明と情報公開という基本姿勢をもとに対応を行ってきました。
 その中、墜落事故跡地の取り扱いについて、「壁を技術的に可能な限り取り外した後、それを他の場所に保 存して本館の復元を優先させ、残し方についてあらためて議論していくこと」が第345回理事会において承認され、墜落から11ヶ月後の7月6日、本館ビル の「壁」の切り離し作業を行いました。学生らが見守る中、4日間に及ぶ作業は混乱無く順調に進み、3分の1ずつに切り離された壁は、20メートルほど離れ た場所に、補助用の鋼材を取り付けたままで寝かせた形で保存されました。
 切り離し後は、大学の事務機能の回復を優先し、新館の建て替え構想が決定しました。構想は地上6階の鉄 筋コンクリート構造で、延べ床面積は約4,038.68平方メートル(旧本館は約1,640平方メートル)。大学の事務部署を集約し、学生がほとんどの手 続きを行えるワンストップサービスを確保しています。
 そして墜落事故から丁度1年が経過した今年の8月13日、沖縄国際大学米軍ヘリコプター墜落事件対策委 員会は、米軍当局及び日本関係省庁等、多数の関係公的機関に抗議・要請を繰り返し行ってきましたが、今年度に入っても入学試験や入学式の際にイラクからの 部隊が帰還するなど、いまなお本学の上空を米軍ヘリが飛来している現状を鑑み、静寂で安心できる環境の確保の一環として、飛行に対する抗議と牽制の意味 で、5号館屋上にアドバルーンを掲揚しました。
 

5号館屋上に掲揚されたアドバルーン(長田方面から撮影)
 
 アドバルーンは地上50メートルの高さに揚げられ、幅約1メートル・長さ10メートルの幕に「NO FLY ZONE」の文字が掲示されました。掲揚には、当該行為が違法であるか否かが慎重に論議されたが、航空法において米軍用機は適用除外として、日米地位協 定・合意事項においては非公開・非公表の合意事項は国民を拘束する法規範とはいえないとして、国内法においては、航空の危険を生じさせる行為であるか否か はヘリ乗員の責任であり、刑法でも威力業務妨害に該当しないとして、違法ではないと判断しました。
 本学は、事件当日の混乱から徐々に平静を取り戻しつつあるが、依然として機能回復に向けての取り組みを 余儀なくされています。本来ならば教育研究の向上に取り組めたであろうこの一年間の機会損失は大きく、また教職員、学生の心理的負担も少なくありません。 物的補償を含めて本学に及ぼしたあらゆる被害の補償要求、「壁」の残し方についての議論の集約と意思決定等が継続する課題として積み残されているが、これ らの課題については対策委員会を中心として学内の民主的意思決定プロセスを通じて主体的に対応していく予定であります。本学は、米軍ヘリ墜落という創立以 降かつてない惨事を乗り切り、地域に根ざし世界に開かれた大学として、今後とも教育研究の充実に真摯に努め、有為な人材を育成していきます。引き続き本学 へのご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。
 
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