T 評価結果
評価の結果、貴大学は本協会の大学基準に適合していると認定する。
認定の期間は2012(平成24)年3月31日までとする。
U 総 評
1 理念・目的・教育目標の達成への全学的な姿勢
貴大学は、沖縄が本土復帰した 1972(昭和 47)年に、既存の二つの大学、旧沖縄大学と旧国際大学を統合して開学した。設立趣意書では「沖縄の私立大学」を強調し、その意義を地域住民のニーズに応えることにおいていた。しかしながら本土復帰前に2大学があわただしく統合して誕生したという経過から、その理念が学内で意識されることはなく、2002(平成14)年、創立31年目にして、設立時の考え方を継承発展させるべく、「沖縄国際大学は、沖縄の伝統文化と自然を大切にし、人類の平和と共生を支える学術文化を創造する。そして豊かな心で個性に富む人間を育み、地域の自立と国際社会の発展に寄与する」ことを新たな理念として掲げた。それは平和・共生、個性・創造、自立・発展のキーワードに整理される。この理念は、各学部の理念に生かされているが、その開示方法についてはさらに工夫する必要がある。たとえば、『大学案内』には各学部の理念を明確な形で示すこと、さらには大学のホームページなども利用することが望まれる。なお、多様な公表手段を利用する際には、大学の理念と各学部の理念との整合性および学部の理念の説明におけるキーワードの一貫性に注意する必要がある。
2 自己点検・評価の体制
貴大学は、自己点検・評価を行うために、1994(平成6)年に「自己点検・評価委員会規程」を設定し、全学的な委員会組織を立ち上げた。そして、2000(平成12)年度には自己点検・評価活動の結果を、『平成12年度沖縄国際大学の現状と課題―本学の教育の現状と課題』として発表した。さらに2003(平成15)年度には、事務組織改革により自己点検・評価業務が事務局企画課の作業として位置付けられ、専任の職員が配置された。こうして自己点検・評価活動の体制は整い、報告書を作成し発表したが、自己点検・評価活動を大学改革システムのなかに位置付けることが出来ていない。今後は、自己点検・評価の結果を現場にフィードバックするとともに、これを全学的な改革の材料として生かすことが必要である。また、点検・評価結果をより広く公表することに望まれる。
3 長所の伸張と問題点の改善に向けての取り組み
(1)教育研究組織
貴大学が、地域への貢献を理念としてかかげ、三つの学部(法学部、商経学部、総合文化学部)および三つの大学院研究科(地域文化研究科、地域産業研究科、法学研究科)を設置して、教育と研究の体制を整え、地域に有用な人材の育成をおこなってきたことは高く評価できる。たとえば、法学部は、法律専門家を養成するとともに地方公務員や企業で働く法的思考のできるゼネラリストを育成するという課題を担ってきた。大学院では、地域文化研究科の南島文化専攻のようなユニークな専攻を設置して地域研究者を育成し、地域産業研究科では専門的な職業人の育成を行ってきた。
特に南島文化研究所では、継続的に紀要や報告書を刊行し、市民講座も開いている。今後は資料センターとしての充実や国際交流も期待される。研究科の理念に即したものと評価できる。
(2)教育内容・方法
地域貢献の理念をカリキュラムにおいて生かすべく、共通科目群に沖縄関係科目群を設置したこと、各学部において、たとえば、商経学部では専門科目のコースに地域経済コースを設けたことなどは評価できる。アカデミック・アドバイザー制度を設け、オリエンテーションや基礎演習の時間をとおして適宜履修指導を行っていること、オフィスアワーを設けて学生にきめ細かい指導を行っていることも評価できる。
FDに関しては、その重要性が指摘されているにもかかわらず、全体として低調であり、その結果を授業の改善に生かすよう更なる工夫が望まれる。
(3)学生の受け入れ
学長が委員長となる入試管理委員会のもとで、全学的な試験を実施している。入学試験問題の作成については「問題作成者連絡会」において問題の相互チェック体制ができている。過去5年間、継続的に志願者が3,000人を越えており、適切な学生募集方法をとっていると評価できる。
しかしながら定員管理については、収容定員に対する在籍学生数の比率が、法学部1.25、商経学部1.25、総合文化学部1.23となっており、教育の質を重視する観点からその比率の低減を実現することが望ましい。
(4)学生生活
授業料減免制度や大学独自の奨学金制度、家計急変者を対象とする学費減免や奨学金支給など、学生の経済状態を安定させるための配慮がなされている点は評価できる。また学部を超えた人間関係つくりを目指したティー・アワーの実施はユニークな試みである。
他方、セクシュアル・ハラスメントに関して、規程の制定や、専門窓口と常設委員会の設置などに取り組む必要がある。また、特定の曜日時間に講義が集中するため、乗用車通学の学生の駐車場が確保できないという面があるので、早急に改善する必要がある。
(5)研究環境
沖縄法政研究所や南島文化研究所などのユニークな研究所と各研究科が連携して研究活動を進める体制がとられている点は評価できるが、教員個々をみると研究業績にはアンバランスが生じている。これは科学研究費補助金への申請件数・採択件数や受託研究費を含む外部資金の受入額が少ないことにも現れている。担当授業時間数の不均衡を解消するよう見直すことや、研修機会の保障などにより、各教員の研究時間を確保できるよう配慮することが望まれる。
(6)社会貢献
大学の理念・目的である「地域に根ざした地域のための大学」に忠実に、社会貢献を展開してきたこと、さらに過疎、離島地域に対する支援を視野に入れていることは高く評価できる。具体的には、公開講座委員会と三研究所がそれぞれ独自に運営している公開講座、地方自治体との協力、エクステンション・センターの有効活用などがあげられる。
(7)教員組織
専任教員の採用、任免については、全学規程にもとづき公正に行われている。大学設置基準上必要な教員数は123名であるが、それに対する専任教員数は125名、学長を除くと124名となり、基準を満たしている。また教員1人あたり学生数も適切である。
なお、教員の年齢構成が高齢化しているので、今後新規採用の際、この点を配慮する必要がある。また、大学院の各研究所は、規程で定めた基準に基づいて人事を行っているが、法学研究科では資格審査に関して来年度から他研究科と同じ申し合わせ事項を適用することになっており、その厳正な実施が望まれる。
(8)事務組織
大学の理念が事務局と教務部の両部門において共有されており、教員組織と事務組織との協力関係は良好である。学長が理事長を兼務する体制のもとで、教育・研究支援を任務とする事務組織は整備されている。
(9)施設・設備
本学は、沖縄本島中部地区宜野湾市に位置し、西隣には米軍普天間飛行場がある。大学設置基準上必要なキャンパス面積、校舎面積を十分満たし12棟の校舎施設および運動場、等があり北部キャンパスにはセミナー・ハウスもある。施設のバリアーフリー化、情報設備の充実を推進してきたが、度重なる改革により、施設不足になっている。情報処理実習室、実験・実習室、共同研究室などの増設が必要である。
なお、全建物内は禁煙となっており、受動喫煙に対する対策が進んでいる。
(10)図書・電子媒体等
新図書館は利用者の利便を配慮した設計となっており、数多くの学生が快適に利用 していた姿が印象的であった。開架式の図書、図書館の中に設置されたニュー・メディア(AVリソース・コーナー)、院生専用室における図書の継続利用サービス、さらに地域住民への開放など、図書館の多機能性および利便性は、高く評価できる。
今後、電子ジャーナルおよびオンラインデータベースの整備が教育・研究上重要になってくることを考慮し、設備およびその利用方法のさらなる充実が望まれる。
(11)管理運営
大学全体の管理運営は適切、公正に行われている。各学部教援会による自治、および大学全体の管理と各学部教援会との調整をはかる大学協議会のあり方は、分権化と
集権化の同時実現と言う意味において有効な組織である。
(12)財務
教育・研究の十全な遂行と財源確保の両立を図るために、授業料値上げと収容定員増による学生生徒等納付金に依存しようとしているが、教育・研究の充実を図るためには、安定した学生の確保はもとより、補助金および外部資金等の獲得による財源確保をより積極的に取組みされることが望まれる。
また、大学の将来像を総合的に示すという観点から、総合将来計画(中・長期の教育・研究計画)の策定とそれに基づいた中・長期的な財政計画の策定が望まれる。
(13)情報公開・説明責任
入学試験に関する基礎的な情報は、入試要項に公開されている。入学者選抜の透明性に関して、可能な限り選抜基準を入試要項に記載すること、そして受験生の希望により得点を開示することが大学の説明責任上必要である。
財務情報については、「学報」およびホームページをとおして財務三表を学生・父母・教職員等広く一般に公開しているが、公開にあたって詳細な解説を付すことや小科目まで公表対象に含めることなどを検討する必要もあろう。
V 大学に対する提言
総評に提示した事項に関連して、特筆すべき点や特に改善を要する点を以下に列挙する。
一、 長所として特記すべき事項
1 教育研究組織
1) |
大学院法学研究科に限定されずに、沖縄国際大学各学部の教員によって構成される研究組織として「沖縄法政研究所」の存在は高く評価される。とりわけ、特許庁をはじめとする他の公的機関が主催するセミナーを後援し、沖縄国際大学で開催したことは意義深い。 |
2 教育内容・方法
(1) 大学・学部等の教育研究の内容・方法と条件整備
1) |
共通教育の運用については、教務部長を委員長とする全学的な「共通科目運営委員会」に委ねられ、個々の学生の自主的な選択履修が可能となるように工夫されている。 |
2) |
共通科目として、国際理解科目群を設けるとともに、海外の五つの大学と姉妹校を締結し、海外語学・文化セミナーを開催していることは、国際交流を正規科目と課外活動の両面から支えるものとして意義深いことである。また、交流協定に基づき、留学先の授業料の免除および奨学金として年間授業料および施設費相当額が給付されていること、留学先で取得した単位が学内で学んだ単位として認定されるところは優れている。 |
3) |
共通科目として、沖縄の地域性―自然・文化・歴史等―に配慮した「沖縄関係科目群」や沖縄の特殊性の観点からの「平和」に関連する科目群の設置は、本学の特色を明確に打ち出していて、注目すべき点である。また、専門科目のコースに地域経済コースが含まれていることは大学の理念を具体化したものとして評価できる。さらに各科目群のテーマを深く学修したい学生のために共通ゼミを設けていることも評価できる。 |
4) |
1学年40単位と履修科目登録の上限を定めている点は、評価できる。近年の学生の低学力化や学部教育における専門科目の位置づけなどを考えると、その意義は大きい。 |
1) |
「法学概論」の重要性を直視し、少人数クラスによって個別指導を行うとともに、これを「演習T・U」に連動させる仕組みは、導入教育の一つのあり方を示すものとして評価できる。
法学検定試験を活用して、学生の全国レベルにおける客観的到達度を測り、役所や企業等への就職に際しての一つの目安としているのは、学外に広く視野を向けた積極的な対応として評価できる。 |
(2) 大学院研究科の教育・研究指導の内容・方法と条件整備
1) |
社会人への教育について、授業の夜間開講や入試選抜方法について配慮するなど様々な工夫が見られる。 |
3 学生の受け入れ
1) |
大学・学部等の学生の受け入れについて、多様な入学試験制度を設けて、積極的な学生の受け入れを制度化するとともに、とりわけ専門学校・総合学科卒業生についても対象範囲を拡大し、大学教育の機会を用意していることは評価できる。 |
2) |
大学院研究科の学生の受け入れについて、演習担当教員あるいは職場の上司の推薦書を提出させることを要件とする推薦選抜制度は、大学院法学研究科の教育・研究上の理念・目的に対応するものとして高く評価できる。 |
4 社会貢献
1) |
社会貢献を推薦する中で、沖縄地区の知的ないし文化的過疎地域、離島に対する支援を視野に入れている事は評価できる。 |
5 施設・設備
1) |
視覚障がい者のために点字プリンターなどの機器や対面朗読室が用意されているところは評価できる。 |
6 情報公開・説明責任
1) |
「学報」およびホームページをとおして財務三表を学生・父母・教職員等広く一般に公開している点は評価できる。 |
二、 助 言
1 教育内容・方法
1) |
FDについては、個々の教員による学生の意見聴取や授業の評価だけでなく、大学として、客観的なデータに基づく組織的な導入をあわせて検討する段階に来ている。 |
1) |
シラバスについて学科ごとに統一的なフォームで書かれていても形式的なものが含まれており、実際に学生や大学外で関心を持つ者にとって具体的な授業内容を示すものとはなっていない場合が見受けられる。 |
2) |
学生による授業評価および学生の満足度を計る制度が導入されていないことについて、早急に改善する必要がある。 |
1) |
「法学概論」および「基礎演習」については高く評価するものであるが、その内容や意義が『講義概要』に記載されていない。共通する目的や内容について学生に説明する記載があった方が、科目の目的が明らかになるとともに、教員間による内容の大きな差異が生じないようにできる余地がある。 |
2) |
履修指導の延長上にあるものとして、卒業後の各種資格試験を含む進路相談は、法学部において専門的要素が少なくないので、就職部では十分に対応できず、演習の担当教員を中心にいかに拡充していくか課題である。 |
2 学生の受け入れ
1) |
大学院研究科の学生の受け入れについて、地域文化研究科では、大学院における教育・研究体制から見て定員の倍の学生がいることは早急に改善されるべきである。 |
1) |
地域産業研究科では、6つある領域のうち、教員の都合で特定領域の募集を見合わせることは問題がある。 |
3 学生生活
1) |
セクシュアル・ハラスメントの規程と常設の委員会を設ける必要がある。 |
4 研究環境
1) |
地域文化研究科では、一部の教員に近年の業績がない。また研究業績として計上されているものも、かならずしも専攻する研究内容に照らして、また大学院における教育・研究という観点からするなら、研究業績といえないものがあり、大学院における教育・研究の成果として示されているものが少ない。 |
1) |
地域産業研究科では、外部資金による研究がそれほど多くない。とくに代表者としてのものが少ない。 |
1) |
法学研究科では、大学院担当教員の一部に、研究業績が著しく不活発な教員が見られる。大学院法学研究科の教育・研究上の理念・目的が沖縄法政研究所の存在を前提としていることからすると、上記研究所の研究活動と大学院の研究指導を連動させることを検討する余地がある。「沖縄法政研究所」は、沖縄およびその周辺における法律、政治およびそれに関連する諸問題の研究を目的として設置されているとされているが、最近の活動状況をみると必ずしもそのような形になっているとはうかがえない。 |
5 教員組織
1) |
法律学科の教員年齢構成のうち60歳代が、40%を占めており、近い将来に教員の補充を検討することが必要である。 |
2) |
法学部固有の人事についてみると、専任教員と兼任教員との採用手続でどのような違いがあるのか否か、実務家を専任又は兼任として採用する場合に、どのような点に留意しているか等が明らかでない。これらの事項について明確な要件を定めた規程を早急に設ける必要がある。
|
1) |
商経学部では、教員の高齢化が目立つ。教員1人あたり学生数が60名を上回る年度も過去にあり、2003(平成15)年度でも55.5人と多い。教育指導方法の改善促進などのFD活動を組織的に展開することが望まれる。 |
1) |
総合文化学部では、社会福祉専攻にあって実習がきわめて重要となる。しかしながら学生数に対する実習のための助手は2003(平成15)年5月1日現在では2名であり、かつ社会福祉士および精神保健福祉士の指定科目である現場実習、援助実習を兼ねる体制となっている。専任教員が少ないなかでこのような補佐体制では実習を十分指導する体制にあるとは言えない。 |
1) |
地域文化研究科では、教育・研究活動評価について具体的な評価のデータや評価方法が示されていない。今後、大学全体として特に教育活動の評価について、客観的なデータや資料の基礎となるFDを推進するなど検討が求められる。 |
1) |
地域産業研究科では、実験系でないとしても研究支援職員の配置は、教育・研究内容を高める上で必要と思われる。 |
1) |
法学研究科の教員組織につき、『沖縄国際大学大学院法学研究科・2003年度大学院案内』に記載されていないのは、大学院案内は本学大学院法学研究科を受験するか否か検討する判断材料を提供するべき趣旨に照らし、疑問であり、改善する必要がある。 |
2) |
大学院の各研究科は、規程で定めた基準に基づいて人事を行っているが、法学研究科では資格審査に関して来年度から他研究科と同じ申し合わせ事項を適用することになっており、その厳正な実施が望まれる。 |
6 施設・設備
1) |
一般に、現在の大学における最も重要な課題の一つである安全災害対策についての記述が簡単に過ぎ、点検・評価としては極めて不十分である。 |
1) |
総合文化学部では、人間福祉学科の新設にともなう実験・実習の施設・設備が十分整備されていないようである。新たな施設の新設が検討されているようなので、その完成に期待したい。 |
1) |
地域文化研究科では、専攻ごとの院生研究室も設けられていないようである。共同研究室に学内LANに接続された端末が設置されているとのことであるが、院生から要望が出ているように、少なくとも専攻ごとにこれらの設備をもった院生研究室を設ける必要があろう。 |
1) |
地域産業研究科でも、院生個人に研究室もしくは机等は配置されていない。 |
1) |
法学研究科では、自習室・資料室は整備されているが他の研究科と共同利用とのことであるが、研究科ごとに用意されることが望ましい。 |
7 財務
1) |
中・長期の教育・研究計画を含む総合将来計画とそれに基づいた中・長期的な財政計画の策定が望まれる。 |
2) |
貸借対照表関係比率15項目のうち、特に重要な自己資金構成比率、流動比率および総負債比率をはじめとした8項目が文系複数学部の私立大学平均と比較して経年的に低くなっている点は改善の努力が望まれる。
|
三、 勧 告
な し