●Message

 中国の古典に「近思録」という書物がある。その「為学篇」という箇所に張横渠という人が「天地の為に心を立て、生民の為に道を立て、去聖の為に絶学を継ぎ、万世の為に太平を開く」と述べている。最後の「万世の為に太平を開く」の部分は、太平洋戦争終結時の昭和天皇の、いわゆる玉音放送に引用されて以来有名になったが、その前部は等閑に付されたままである。この中の「去聖の為に絶学を継ぐ」という部分は、学は聖人を目当てにすべし、志は至高たるべし、と教えているのだが、後生のわれわれが何の為に学問をするかと問うとき示唆するところが大きい。当時の学者は、学問を「去聖の為に」したのである。幾多の先人たちが築いた人智の集大成を、そのために心血を注いだ先人たちを目標に、彼らから受け継ぐ決意で学んだのである。
 仮に、われわれが先人たちの智を学ばなければどうなるか。人類が営々と築き上げてきた人智の蓄積はたちまち雲散霧消し、先人の労苦はすべて水泡に帰すことになる。人間は自然であり動物のまま生まれ落ちる。生まれた子供たちに大人たちは先人から受け継いだ智を授けることで彼らを「人間」に育てていくのである。もし、ほんのわずか十数年の間、大人たちが子供たちに智を授けることを怠ったとしよう、あるいは、子供たちが大人たちの智の伝達を拒絶したとしよう。そのとき子供たちは何も教えられないままに、あるいは何も学ばないままに大人になる。そうなれば、人類の文明・文化はいっきに数千年あるいは数万年の過去に後退することは必至であろう。その時になって今日われわれが享受している文明・文化を復元しようとするならば、人類はそれこそ気が遠くなるほどの過去から出発し直さなければならない。民主主義一つにしても、それが数千年の歳月と無数に近い多くの人命と血で贖われたことを思えば、人は「智の断絶」に身の毛のよだつ恐怖を覚えるに違いない。教育とは、人類が数千年の歳月と数億人の血で贖い、営々と築いてきた人智の蓄積を後生に伝達することである。
 今日でも大学が最高学府であることに変わりはない。大学院は大学教員あるいはそれに類似する専門家を養成する機関で、いまだ大学の最高学府の地位を奪う性格のものではない。したがって、前述した「人智の蓄積」の最高水準の部分を引き継ぐ学習は、大学教育の中でなされねばならない。だが、悲しいことに現代の現実は「去聖の為に」に学問をしている余裕がない。目下のところ、大学は就職のために必要な知識を学生に与える役を果たすのに汲々としている感がある。しかし、目下は目下でいたしかたないとして、大学は、人類が数万年の歳月と無限大の犠牲を支払って獲得した人智の蓄積を「去聖の為に」学び、後生に伝達するという壮大な使命を忘れてはならない。
 本学・大学院の地域文化研究科・人間福祉専攻(臨床心理学領域)が、2004年4月5日付けで、財団法人・日本臨床心理士資格認定協会から「臨床心理士養成に関する指定大学院第二種」に指定されました。臨床心理士資格試験については、指定校修了者に受験資格が限定されることになっており、県内では本学が最初の指定となりました。第二種指定は、第一種と異なり、大学院修了後に1年間の臨床経験が必要となりますが、本学では、大学院の附属施設である「心理相談室」等で対応する予定です。今回の指定期間は2005年4月からの4年間で、それ以降は再審査を受け、期間を延長することになりますが、今回の指定により、県外に出ることなく受験資格が得られるようになるため、臨床心理士を志す学生にとって利便性が高まることになります。石原昌家・地域文化研究 科長や星野公夫教授らは「心のケアが社会的に重要な問題となっており、臨床心理士に対する ニ ーズ は高い。 指定大学院 と なったことで 、

心理学領域に関する説明会
これまで以上に地域に貢献したい」と今後の人材育成にかける意気込みを表明しています。なお、8月1日に開催された同心理学領域に関する説明会には、学内外から多数の参加者があり、社会的関心の高さが伺える結果となりました。
 このほど、平成16年度文部科学省「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」に、本学の産業情報学部が琉球大学工学部・沖縄県立芸術大学デザイン専攻との3大学連携で応募し、申請71件の中から、見事選定されました。同プログラムは、各種審議会からの提言など社会的要請の強い政策課題に対応したテーマ設定を行い、各大学等から申請された取組の中から特に優れた教育プロジェクト(取組)を選定し、財政支援を行うことで、高等教育の更なる活性化の促進を目的としています。今回、産業情報学部は「人材交流による産学連携教育」というテーマに対して、「産学連携による学生の即戦力化プログラム」という取組を提言しました。その内容は、実務研修を目的として、学生を情報関連企業に派遣し、卒業後に社会で即戦力として活躍可能な人材を育てるというものですが、従来のインターンシップ事業とは異なり、長期(約1年間)にわたって系統的かつ確実に幅広い実践的知識・技術・経験を習得させ、ビジネスマナーや責任感といった精神的涵養も図りつつ、プロフェッショナルなIT人材の育成を目指すものです。今回の取組に対しては、将来の大学における新しい経験学習・実践学習のモデルになり得るものとして、高い期待が寄せられています。なお、同取組の詳細については、http://www.okiu.ac.jp/asato/needs.htmlで公開しています。


池田会長(左)から渡久地学長へ後援会補助金を贈呈
 5月28日、本学7号館で平成16年度の後援会・定期総会が開催されました。後援会は在学生の保護者や教職員等によって構成されており、総会前には、保護者への個別相談が実施され、学生生活や学業成績・就職指導などについて熱心なやりとりが行われました。
 定期総会では、平成15年度の収支決算や平成16年度予算案・事業計画案などが審議・承認され、後援会の池田会長から渡久地朝明学長へ「後援会補助金(35,287,000円)」の目録贈呈が行われました。この「後援会補助金」は、学生の各種活動(文化活動・国際交流・体育奨励等)の支援や奨学金、並びに教職員の教育研究費(研究助成費)として活用されており、渡久地学長は後援会による手厚い支援活動に対して、感謝の言葉を述べました。なお、今回の総会では役員改選も行われ、後援会会長に池田光男会長が再任、副会長に新垣實教授が新任されました。総会後には、厚生会館で懇親会も行われ、琉球芸能文学研究会の学生が踊りや唄を披露するなど、和やかな雰囲気の中、関係者一同が親しく懇談しました。
 9月25日、本学・産業情報学部の開設を記念して「ユビキタスネットワークと地域振興-沖縄の可能性-」と題する講演会が開催されました。第一部では、東京大学・情報基盤センターの越塚登助教授と全国農業協同組合連合会・大消費地販売推進部の原耕造次長が基調講演を行いました。越塚助教授は「食品に生産履歴情報という付加価値を与えることで新たなコンテンツ・ビジネスが成立する」との考えを示し、地域農業活性化の手段としてのトレーサビリティ(生産履歴)システムの可能性について、「ICタグ」などの具体例を挙げながら報告しました。また、原次長は「健康と長寿など独自の価値観に基づいた農業・産業政策を行う必要がある」と述べ、沖縄独自の農業による地域振興について提案しました。
 続く第二部では、千葉大学・大学院の松田友義教授によるコーディネートの下、越塚助教授と原次長に富川盛武・産業情報学部長を加えた3名のパネリストによるディスカッションが行われ、「IT(情報技術)をどのように活用し、地域全体の振興につなげていけるのか」、とりわけ「ユビキタス技術を用いて、沖縄の持つ様々な経済的可能性(ポテンシャル)をどのように顕在化できるか」という観点から、活発な議論が交わされました。

<<前のページ ホーム 次のページ>>