大堂原貝塚発掘現場を見学し説明を受ける

 6月26日、南島文化研究所の第26回 地域学習が行われました。地域学習は年1回、フィールドワーク形式で実施されており、これまで伊是名・伊江島・久米島・津堅島などを巡り、離島の自然・歴史・文化・地理などについて見識を深めてきました。今回は、高橋俊三所長を始めとする南島研所員の先生方を講師役に、今帰仁村の古宇利島と名護市の屋我地島を訪問しました。学生や一般参加者を含む総勢・約60名の一行は、先ず運天港から古宇利島へと渡り、地元の小浜美千子区長から同島の概要についての説明を受けた後、島内の拝所などを巡りながら、民俗学や環境学など各分野の講師による解説を受けました。その後、屋我地島へと移動した一行は、国立療養所・沖縄愛楽園を訪問し、同園の敷地内を巡りながら、療養生活の様子や戦中・戦後の状況など愛楽園の歴史について、同園自治会・副会長の迎里竹志さんから説明を受けました。参加者一行は、屋我地島の風光明媚な自然に触れ、その美しさに驚嘆する一方で、沖縄愛楽園の辿った苦難の歴史についても想いをめぐらすなど、非常に感慨深い地域学習となったようでした。


 このほど、南島文化研究所と沖縄市教育委員会・琉球新報社共催による「第26回 南島文化市民講座」が、沖縄市民会館中ホールで開催されました。今回の講座は「少年・少女の心は今」と題し、激しく変容していく社会の中で、少年・少女の心に今、何が起こっているのか、複雑に揺れ動く子供たちの心について、市民と専門家が共に考え、理解する手がかりを得るべく開催されました。
 先ず、「少年非行の現状と課題−生徒指導の現場から−」と題して講演した山城良嗣さん(沖縄県教育庁・那覇教育事務所・指導主事)は、沖縄の少年非行の特徴として、中学生と無職少年の検挙率が高く、傷害など粗暴犯の割合が高い点を指摘。これらの課題に対して、学校現場だけの対応では根本的な解決にはならず、地域や行政・関係機関の力を結集して取り組む必要性があるとし、具体的な取り組みの事例と効果について報告しました。
2番目に登壇した本学・人間福祉学科の片本恵利講師は「ヤンバルの少年・少女との関わりから見えてくること」と題し、本島・北部地域でスクールカウンセラーを務めた経験に基づき講演。片本講師は「ヤンバルの子供たちも携帯電話を持ち、現代的な様々な情報にふれる状況にある。子供たちは現代的な感性と情報を持つがゆえに、伝統的なシステムや親世代との文化的ギャップに悩み、言葉を失っている。実際に郡部の不登校出現率はかなり高い」と報告しました。
最後に、「少年・少女のこころを理解するには」というテーマで講演した桑原知子さん(京都大学大学院・教育学研究科・助教授)は「子供の問題は実は親の問題であり、非行で子供は何かを訴えている。子供に向き合い、話を聞くことが大切であり、子供が抱える問題について大人も悩み『対決』することで子供を『受容』できる」と強調しました。引き続き行われたパネルディスカッションでも、参加者から多くの質問がなされ、熱心な討論が展開されました。

 11月26日(金)、韓国光州市にある全南大学校において、湖南文化研究所と南島文化研究所による国際学術シンポジウムが開催され、南島文化研究所からは高橋俊三所長、宮城邦治所員、平香織所員の3名が出席しました。
 「東アジア文化研究の地平」と題された発表では、全南大学校・崔協教授が「東アジア文化と地域研究の現況−韓国の人類学を中心として−」という題で東アジア文化談論の重要性を発表され、次に南島文化研究所の宮城邦治所員が「東アジア文化圏における闘牛文化−沖縄の闘牛を中心として−」という題で沖縄の闘牛文化を紹介し、また特徴のある日本各地の闘牛について発表されました。そして、全南大学校・劉民鋼客員教授が「漢語普通話(標準語)と方言の衝突及び対策」という題で、現在の中国における言語の分裂と方言の保護について発表され、最後に南島文化研究所の平香織所員が「文末表現に関する研究−韓国語の終結語尾と日本語の終助詞を中心に−」という題で、話者の心理的態度を表す韓国語の終結語尾と日本語の終助詞の対照可能性について発表しました。
このシンポジウムは、東アジアという1つのテーマを基に日・韓・中の研究者が集まり、様々な研究分野についての発表とそれに基づく討論を行う場として、非常に有意義な学際的交流の機会となりました。

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