本学の人間福祉学科では、毎年「海外社会福祉演習」を実施しています。この演習では、学生がアジアや北欧を訪問し、各国の福祉制度や生活にふれることで国際的な視野を広め、卒業後も国際的に活躍できる能力を培うことを目的にしています。2004年度の海外社会福祉演習は、昨年8月と9月に北欧・北米・アジアの3コースに分かれて約2週間の日程で実施されました。参加した学生の皆さんに今回の演習について報告していただきました。 | |||
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海外社会福祉演習:タイレポート 人間福祉学科 安谷屋 可奈子 |
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私は2004年8月29日から約2週間、海外演習のタイコースに参加しました。タイの首都バンコクでは、高層ビルが立ち並び、その発展ぶりに驚きましたが、研修2日目にして、この国の発展の裏に広がる貧困の現状を目の当たりにしました。バンコクには約1,700ヶ所、タイ国全体では3,000ヶ所のスラム街があり、私達が訪れた地域は、人が1人通れるかどうかという狭い路地に家々が並らんでおり、水路はどす黒く濁り汚染されていて、ゴミ捨て場のような臭いが漂っていました。私は目の前の現実に衝撃を受けてしまいました。日本では決して考えられないような最低のずっと下のレベルの生活をしていたからです。国や経済の発展に伴って犠牲が生じるのは仕方のないことなのでしょうか。行政は、犠牲になる国民が少しでも楽になるように支えてあげるべきだと思います。その支えが不十分だったためにスラム街ができたことを学びました。私はこの現実をしっかりと目に焼きつけ、初めて貧困問題について真剣に考えるようになりました。 | |||
今回の研修では、たくさんの孤児達に出会い、障害児と接する機会もありました。ある施設では、私がしゃがんで座ると1人の子供がハイハイをして近づいてきたので、抱っこをして抱きしめると、その子も抱きついて顔をうずめてきました。私はその子がいとおしく、抱きつかれて嬉しくなりましたが、同時に、この子達が親の愛を受けることが出来ない寂しさ、もっと愛が欲しいというストレートな思いを感じた気がしました。私は今回の研修で日本では知ることのできない貧困から生まれる問題を五感を通して、感じ考えることができました。どんなに貧しく悲惨な状況でも、人々は助け合い豊かな文化と厚い人情で支えあって生きることが出来ることも知りました。私は目の前にある豊かさが当たり前のものと思ってきましたが、この豊かさは良き開発が行われてきた結果であることに気づきました。そして、全ての人が心も生活も豊かになれるように良き開発に関わっていきたいと思います。 | |||
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海外社会福祉演習(北欧コース)に参加して 人間福祉学科 平良 美典 |
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「ノーマライゼーション」この言葉を、福祉を学ぶ者は何度も耳にしますし、これからの社会において非常に重要な理念でもあります。この理念は、福祉先進国の1つであるデンマークが発祥ですが、今回の研修では、そのデンマークを含む北欧4ヶ国を訪問し、大学で学んだノーマライゼーションを実際に感じとることができました。 | |||
今回の視察先は、どこも私たちが考える「施設」ではなく、普通の住まいでした。入居者は一人ひとりに素敵な個室があり、個人の考えが尊重され、プライバシーが守られていました。職員も仕事に誇りを持っている様子が伺え、また、どの国も子供から高齢者まで全ての人が大切にされ、住みやすい環境を保障する制度がありました。更に、国民一人ひとりが生活の質や人生について高い意識を持っていて、これらが社会全体としての福祉の発展につながるのだとわかりました。この沖国大の海外社会福祉演習は、私達自身が学びたいことを取り入れ、つくり上げていく研修です。航空券も宿泊先も自分たちで予約するので、旅費も他の研修に比べると安い値段に抑えることができます。私にとって今回の研修は初めての海外体験で、視察で学ぶこと以外にも、イギリスの街並みや北欧の美しい景色などを実際に見ることができ、また、地下鉄や船・夜行バスなどの交通機関も利用し、各国の通貨での買い物も体験することができました。人々の様子や文化の違いを肌で感じることによって、これまでの私の「価値観」は良い意味で大きく揺らぎました。 | |||
私は将来、障害児を支援し、子供の頃から共に生きる社会の創造に貢献したいと考えています。ノーマライゼーションの実現に向けて、私自身を含め一人ひとりが意識を高く持つこと、それが社会福祉の発展に大きく影響することを実感する研修となりました。 | |||
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