本取組の内容
(1)受講前提科目を設けた、科目の体系的配列
 教員免許状取得に必要な「教職に関する科目」について、本学では教科教育法を主軸にして「体系的」に配列し、「段階的」に履修させています。いわば、受講者をふるいにかけていくシステムを構築しています。単なる受講年次によるのではなく、受講前提科目を設けている点に特色があります。
 教育実習に行くことの出来る学生を何らかの条件を付けて制限している大学は確かに多数にのぼります。修得科目の平均評点を条件にしている大学、面接を行う大学、複数の前提科目を設けている大学などです。
 しかし、本学のように受講前提科目を設け、その科目の単位取得が無いと次の段階の科目を受講できないとしている大学は皆無に近いのです。厳しいようですが、学生は何度でも納得のいくまで単位修得に挑戦することができる一面も持っています。
 このシステムにより、入学当初600人近い教員免許取得希望者を最終的には約200人にまで絞ることができます。
 
(2)少人数通年指導の教科教育法クラス
 教科教育法は、少人数クラス編成とし、教科教育法演習とセットで、同一教員による通年・一貫指導体制をとっています。その実現のために、各教科に原則2名以上の教科教育法専任教員を擁する体制をとっていることです。
 いまだに、教科教育法を大講義で行う大学が多い中で、また、教科教育法を教科教育学の専門家が担当しない大学が多い中で、さらに、教育実習指導の送り出し責任が少数の教職課程専任教員に任されている大学が多い中で、本学のクラス編成(少人数)と科目編成(教科教育法と同演習を通年指導)ならびに教員配置(教科教育学専門家の配置)のあり方は、他にあまり例を見ることがありません。
☆結節点となっている教科教育法☆
本取組の教育方法及び履修指導上の大きな特徴は、教科教育法を、教育学と学科の専門科学との結節点、ならびに教育学の理論と教育現場での実践との結節点として位置づけていることです。
 
(3)一人1時間以上の模擬授業
 教科教育法演習では総ての学生が1時間(50分)の模擬授業を必ず1回は行うようになっています。模擬授業は一人の学生が授業者となり他の学生を生徒役にして授業を行うものです。5分間ほどのマイクロティーチングとは違います。
 模擬授業は、模擬的であれ、学生にとっては教壇に立ち授業する初めての体験であることから、その準備(教材研究、指導案づくり、教具の準備)のために、一月前後を要します。模擬授業後は必ず振り返り(自己評価シートや修正指導案の提出など)の機会を設けます。
 この過程を通して、教壇実習の構えや資質・能力が形成されるだけでなく、他の教職に関する科目(教育学・心理学)と教科に関する科目(学科の専門課程)の学修へフィードバックが行われたり両者の関連づけが行われたりすることで、両者の学修の深化に結びついています。
 さらに、グループを作ってこれら一連の学びを行うことから、教員に必要な他者との協調性も豊かに形成されています。

模擬授業風景
 
(4)多様な体験的教育活動
 以上の教科の模擬授業の他、特別活動(教科外活動)の模擬指導、教育実習の直前指導の中での集団遊び・集団レク指導のワークショップなど、体験的な教育活動を多様に取り入れ、実践的な指導を行っています。
 特別活動演習(1単位)を特別に設け、教育実習の年の2月の2日間、現役または元中高教師を講師に招き、一クラス30人〜40人規模のクラスを編成し、学級活動を中心にした特別活動(学級開き、学級総会、学級行事など)の模擬的な指導を行っています。
 これは、教育実習が特別活動(教科外活動)においても行われているという当然の事実に対応するものです。
 教育実習直前の事前指導の集団遊び・集団レク指導は、実習生として子どもと接することのできる「身体」づくりを目的に、現役の中学校教師を講師に招き、集団遊びやレクゲームなど、実技を含めた内容を指導します。
 
(5)ユニークな教育実習の事中・事後指導
 教育実習の中間指導としての教育実習生との中間懇談会や、事後指導としての教育実習校との懇談会を設けています。
 教育実習生との中間懇談会は、教育実習の中間日の土曜日に県内北部・中部・南部・各離島の地区毎に実習生と本学教員が懇談。実習状況についての情報交換とともに、実習生が個々に直面している問題を出し合い、意見交換とアドバイスを行います。
 教育実習校との懇談会は、次年度の教育実習指導の改善と充実を目的に、県内北部・中部・南部・各離島の地区毎に、県内教育実習校から1名ずつ(校長または教頭または実習指導教諭)招き、大学への要望等を聴きます。同時に、教育実習生個々の状況も具体的に聴くことで、実習生の個別的な事後指導に結びついています。
 こうした例は全国的に多くはないのです。
 
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