第4章 大学院における教育・研究指導の内容・方法と条件整備
第1節 地域文化研究科
教育・研究指導の内容(教育課程等)の策定にあたっては、本大学院及び本研究科の理念・目的を十分に踏まえ、また、学校教育法第65条(大学院)、大学院設置基準第3条第1項(修士課程)の規定を遵守している。
以下、@教育課程については専攻ごとに記述し、A単位互換、単位認定等、B社会人学生、外国人留学生等への教育上の配慮、生涯学習への対応、C研究指導等については、本研究科としてまとめて記述する。
(1) 教育・研究指導の内容等
【現 状】
@ 教育課程
(a) 南島文化専攻
ア、教育課程の基本構想
本専攻は4つの教育研究領域に分かれている。
言語文化領域は、南島地域の言語と文学の研究が中心だが、官公庁職員や一般社会人の再教育、教員の専修免許など高度の免許・資格取得を考慮して、日本の古典文学や近現代文学も含んでいる。
民俗文化領域は、南島地域が研究の主要対象だが、東アジア、東南アジアとの関連性も重要なので、周辺地域との比較の視点を重視している。
先史・歴史文化領域には二つの柱がある。一つの柱をなす考古学は、南島地域の先史文化を研究対象としている。もう一つの柱をなす南島史学は近世史と近現代史に分かれるが、
近世史では特に古文書講読を重視し、南島地域史への理解を深めている。
社会文化領域は、社会学を中心として南島地域の社会関係の特質、社会構造の維持メカニズムとしての文化問題などを取り上げている。また、南島社会の基本構造、人間生成、現実の社会問題処理も含んでいる。
大学院学生は以上の各領域を切り口として南島地域文化を系統的に研究するが、一つの領域に偏ることがないように履修方法が工夫されている。地域研究の重要な側面が総合学習にあることから、専門領域外の他領域からも2科目以上履修することになる。
イ、教育課程
本専攻の修了要件は標準2年在学し、所定の科目を32単位以上履修し、かつ必要な研究指導を受けた上、修士論文の審査及び最終試験に合格することである。学生は入学試験の際に選択した研究領域に沿って、各領域の必修科目である特殊研究T及び特殊研究Uを中心にその領域内の関連科目を履修する。さらに総合的学習を図る目的から専門領域外の他領域から2科目以上を履修する。
本専攻はセメスター制を採用している。この制度は1学年度を前期と後期に分けて2学期制にしたものであり、学期単位で単位履修が可能となる。ただし、特殊研究Tと特殊研究Uは通年演習科目である。
ウ、学部との関連
本専攻の講義を担当する教員はほとんどが総合文化学部の専任教員であり、学部での講義担当の義務を負い、学部教育の基礎の上に本専攻の教育を実践している。
(b) 英米言語文化専攻
ア、教育課程の基本構想
本専攻の教育課程は大別して@英米言語文化領域、A英語教育学領域の2領域から成るが、英米言語文化領域を英米文学系列と英語学・言語学系列に分化して、学生の多様な研究分野に対応できるように配慮してある。
英米言語文化領域は英米の言語文化を総合的に研究することを中心としており、英語教育学領域はその研究の成果をいかにわが国における英語教育の充実・発展のために活用するかを研究することを中心とする。
両領域とも基本的には英米の言語・文学の研究とその成果の教育面での活用を中心とするが、自らの文化の認識を深め、英米の文化との相違を的確に把握する比較文化的研究の方法論を学習させるため、他領域や南島文化専攻、地域産業研究科などのカリキュラムから4単位以上8単位以内に限って選択できるよう配慮してある。
イ、教育課程
本専攻では2001(平成13)年度から新教育課程を採用した。 旧教育課程の開設科目は英米文学系列22単位(仏文学特論を含む)、英語学・言語学系列14単位(言語文化特論T・Uを含む)、英語教育学系列20単位であった。この教育課程では、英語学・言語学を専攻する学生に、十分な研究が保証できないうらみがあった。このことを解決するため、新教育課程においては各系列とも特殊研究(演習・選択必修)4科目16単位、特論(講義・選択)9科目18単位、合計13科目34単位開設し、さらに3系列に共通する選択科目を4科目8単位開設して、学生の多様なニーズに応えるよう配慮した。
ウ、学部との関係
本専攻の講義を担当する教員はすべて学部英米言語文化学科の専任教員であり、学部での講義担当の義務を負うており、学部の教育の基礎の上に本専攻の教育を実践している。ちなみに、学部英米言語文化学科の上記3系列の開設科目・単位は、英米文学系列15科目58単位、英語学・言語学系列13科目42単位、英語教育学系列4科目8単位となっており、本専攻とその基礎となる学部英米言語文化学科は教育内容上密接な関係を保っている。
(c) 人間福祉専攻
ア、教育課程の基本構想
人間福祉専攻は社会福祉領域と臨床心理学領域から成り、それぞれが専門的な科目を有するカリキュラムとなっている。科目は専攻必修科目、領域必修科目及び選択科目から構成され、それぞれの領域で修士論文を作成する特殊研究が必修となっている。
人間福祉専攻の学生は、どの領域の学生も専攻必修科目である「人間福祉特論T・U」で両領域に共通する基本的な視点や方法論を学び、専攻必修科目で専門領域の基本となる知識や技術を学び、それぞれの選択科目において学生が希望する専門的学習が可能となっている。
社会福祉領域においては、「社会福祉原理特論」「社会福祉制度特論」のほか、地域福祉関連科目は児童福祉、高齢者福祉関連科目が開設され、人間の福祉いわゆる人間の好ましいあり方について考え、福祉に関わる諸問題に適切に対処できる人材養成を目指している。
臨床心理学領域においては「臨床心理学特論」や「臨床心理基礎実習」などの科目を開設し、特に臨床心理士の受験資格が得られるようにカリキュラムを編成している。また、臨床心理学領域では、「特殊研究」「特論」「演習」「実習」の科目を配置して、専門的な学識が段階的・体系的に教授されるようにカリキュラムが編成されている。特に臨床心理学領域では、将来臨床心理士の資格取得を目指している。
また、それぞれの領域は、他の領域からの履修も可能となっており、二つの領域を関連づけながら学ぶことができる。本専攻は昼夜開講の体制をとっており、社会人学生が無理なく履修できるように配慮されている。
イ、教育課程
本専攻では、修了までの2年間に所定の科目を合計32単位履修することが必要である。また、特殊研究において修士論文を作成し、審査及び最終試験に合格することが必要である。内容として、
社会福祉学領域の学生は、専攻必修科目である人間福祉特論T及びU(合計4単位)、領域必修科目である人間福祉特殊研究T及びU(合計8単位)を履修し、選択科目の中から16単位以上、共通領域科目から最低2単位以上履修し、
修了までに合計32単位以上履修しなければならない。同様に、 臨床心理学領域においては、専攻必修科目である人間福祉特論T及びU(合計4単位)と領域必修科目である臨床心理学特殊研究T及びU(合計8単位)を履修し、
選択科目から16単位以上、 共通領域科目から最低2単位以上履修し、修了まで合計32単位以上履修しなければならない。また臨床心理学領域の一部の科目については、他領域の学生の履修を制限し、専門領域の特化を図っている。
ウ、学部との関連
人間福祉専攻における社会福祉学領域と臨床心理学領域は、それぞれ学部の人間福祉学科における社会福祉専攻と心理カウンセリング専攻の二つの専攻の教育が連動し、それぞれの専門領域における専門家の養成を目指している。
また、人間福祉専攻における教員は、人間福祉学科の専任教員が主体となって構成され、それぞれの科目における学部教育との連携のとれた教育を実施している。
A 単位互換、単位認定等
本研究科3専攻をまとめて記述すると、今までのところまだ実施されていない。
大学院間の単位互換協定は未だ実施されていないが、今後は学部同様に可能な限り協定を締結する必要がある。ちなみに、本学の「大学院学則第35条」には、他の大学院との協議に基づき、10単位を越えない範囲で他の大学院の授業科目を履修できるように配慮してある。また、入学前に他の大学院を含め大学院において修得した単位についても、10単位を越えない範囲で認めることができる。単位の認定は「大学院学則第38条」に則り、試験又は研究報告により担当教員が行うことが原則であるが、上記のように他の大学院での修得単位の認定は研究科会の議を経ることになっている。
B 社会人学生、外国人留学生等への教育上の配慮、生涯学習への対応
社会人・有職者学生の便宜を図るため、大学院設置基準第14条特例を受け、夜間その他特定の時間(土曜日の13時以降)に教育を行うことを原則としている。特に、修士論文作成のための必修科目である特殊研究(演習)T及び特殊研究(演習)Uは原則として土曜日の13時以降に開講している。また、夏期及び春期休暇中に各専攻2科目4単位の集中講義を開講している。予定された時間割が社会人・有職者にとって不都合な場合は、可能な限り調整に努力している。
外国人留学生については、彼らの日本語能力に個人差が見られるが、通常の講義の受講に大きな支障をきたすほどではない。入学試験に際して、外国人留学生の日本語能力に関しては、筆記試験及び面接試験によって実証されているので、その点での特別な配慮は必要ないものと思われる。但し、修士論文の作成には日本語または英語を使用してよいこととしている。
その他、社会人・有職者の場合は、勤務事情などを十分に配慮し、外国人留学生に関しては、その文化的相違を理解し、指導教員を中心にきめ細かい個別指導を行なっている。
生涯学習への対応としては、本研究科の開設趣旨の一つとして、生涯学習の意図で入学する学生にその機会を提供することが位置づけられているが、開設以来、純粋に生涯学習の意図で入学した学生はいない。今後は生涯学習を意図する入学者が増えることを期待する。
C 研究指導等
本研究科3専攻をまとめて記述すると、新学期に全新入生対象にオリエンテ−ションを実施し、『大学院便覧』に基づいて大学院学則の解説を行い、引き続き専攻領域別に別れて各領域の履修モデルに基づく科目履修の指導を行っている。
修了に必要な32単位の履修方法については、1年目の前期に12単位以上、後期に12単位以上履修し、1年目で28単位程度履修し、2年目は修士論文指導を中心とする特殊研究U(演習・4単位)に専念するよう指導している。また、各専攻・各領域とも個別の「履修規程」で履修方法をより詳細に規定し、一専攻・一領域に偏することなく総合的な学修の見地から他領域、他専攻、他研究科の授業科目から「4単位以上8単位以内」履修するよう督励している。
日常的には、各領域調整会議や研究科会で了解された各講義の開設趣旨に留意しつつ、各担当者が、講義または演習の時間やオフィスアワ−を通して研究指導を行うが、修士論文指導にあたっては、特殊研究U(演習)の担当者が中心になって指導している。特に専門分野の近いスタッフに補助教員として協力を依頼し、研究指導の充実を期している。また、他の大学院又は研究所等との協議に基づき、学生に当該大学院又は研究所等において、1年を越えない期間に限り必要な研究指導を受けさせることができる制度もある。修士論文の進捗状況を確認するため、1年目の2月末日に修士論文概要を提出させ、2年目の7月下旬には修士論文中間発表を公式に実施している。また、合格した論文については、修了式前(3月上旬)に原則として全担当者、全大学院生の参加する修士論文発表会において論文の概要を発表させている。合格論文は、本研究科紀要『地域文化論叢』に投稿するよう薦めている。
【点検・評価】
各専攻の教育課程は本研究科の理念・目的、諸規定に沿うものであり、問題とすべき点はないが、時代の二−ズ、学生の二−ズを勘案しつつ絶えず検討を続けることも肝要である。特に、開設したばかりの人間福祉専攻においては、今後の推移を見守りより充実したカリキュラムになるよう努力することが要求されている。
単位互換は現在のところ実施されてはないが、その必要性は認められており、せめて沖縄県内の大学院間でも早急に実施したいものである。
社会人・有職者学生は今までのところ入学者の半数近くを占めており、募集定員は充足しているが、外国人 留学生は2003年度まで僅か9人である。教育上の配慮が十分ではないのでは、と懸念される。
今までのところ、研究指導はスムーズに行われている。今後もこの制度を活用していきたい。
【改善・改革方策】
大学院間の単位互換をはじめ、外国人留学生の確保、生涯学習のあり方等を本格的に審議する必要がある。可能な限り2004年度の研究科において問題を提起し、改善策を講じたい。特に、生涯学習を意図して入学する学生に現行規定・大学院学則の厳密な適用が妥当であるか、疑義が生じているのが現状である。
(2) 教育・研究指導方法の改善
【現 状】
@ 教育効果の測定
本研究科3専攻をまとめて記述すると、教育効果の測定は、試験又は研究報告等により行う。筆記試験、研究レポート、口述面談のいずれの測定方法も可としている。授業への出席状況も勘案される。
成績の評価は、優、良、可、不可の4段階評価で、優、良、可を合格としている。優は80点以上、良は70点〜79点、可は60点〜69点、不可は59点以下の基準である。
A 成績評価法
本研究科3専攻をまとめて記述すると、現在までのところ、研究科としての統一的評価法はない。
成績評価は、各講義科目においては担当教員に一任されており、学生の資質向上の状況の検証は各担当教員の科目目標の達成度に鑑みて行われている。評価は基本的に、意欲、態度、知識・理解、技能といった観点から総合的になされている。
研究科としての統一的評価法を策定して、評価の客観性を保証すべきとの意見もあるが、今後とも担当教員を信頼して一任していく。
B 教育・研究指導の改善
本研究科3専攻をまとめて記述すると、現在、各講義の概要は「大学院案内」や『大学院便覧』により周知徹底を図っている。より詳細なシラバスは担当者の裁量に任されている。具体的なシラバスは概ね第一回目の講義のはじめに配布され説明されている。
教員の教育・研究指導の改善を促進するための組織的な取り組みについては、各領域、各専攻の会議をはじめ、研究科会で意見交換を行ない、改善に取り組んでいる。
臨床心理学領域では実習を重視しているが、専攻を設置して間もない状況にあり、実習が適切に行なわれるよう事前指導の徹底を図り、社会人・有職者でも無理なく実習できるよう日程の調整をはじめ最大の工夫を重ねている。
【点検・評価】
成績評価については、「優」の範囲が80点から100点と大きいので、今後は90点以上を「秀」とする5段階評価法を導入すべきである、との意見もあるが、学部との関係や他の大学の評価法も考慮すべきであろう。
シラバスについては、今後は『大学院便覧』に掲載して事前に明示しておくことも学生の履修登録の一助となるであろう。
学生による授業評価は公的にはいまだ導入されてはないが、講義担当者各位が非公式に学生の意見を聴取したり、アンケ−トを実施したりして授業の評価とその結果による反省もなされている。今後は組織的に教育内容・方法を学生に評価させる何らかの仕組みを導入する必要があろう。
教育・研究指導方法の点検は、研究科としてどのように実施するのか、学部教育とは異なり、少人数による授業形態をとる大学院においては、指導体制に適合した点検・評価の方法はどうあるべきか、また、人材育成の方向性については、より高度の知識を有する職業人の育成という研究科の理念・目的に照らしてどうあるべきか、など今後より深い検討と議論がなされるべきであろう。
【改善・改革方策】
学生による授業評価、教育・研究指導方法の点検、指導体制に適合した点検・評価の方法、人材育成の方向性、教育・研究交流の推進など、慎重に検討すべき問題が山積している。2004年度の研究科会において審議し妥当な改善策を見出したい。
(3) 国内外における教育・研究交流
本研究科3専攻をまとめて記述すると、現在までのところ、実施されてない。
学部においては国内姉妹校・国外姉妹校協定に基づいて、学生の派遣、教員の短期交流・研修がなされているが、大学院レベルの教育・研究交流はなされていない。
今後はせめて現在締結している協定校間において大学院間の交流を推進したい。南島文化専攻の場合は、協定校である韓国の韓南大学、台湾の東海大学、中国の澳門大学、タイのヨノック大学などとの、英米言語文化専攻においては特にイギリスのアルスター大学との大学院間交流は期待が持てる。人間福祉専攻においても東南アジアとの交流を望んでおり、またデンマ−クなどの福祉先進国との交流に大きな期待を寄せている。内部の充実した現在、実現に向けて具体的検討に入るべきであろう。
(4) 学位授与・課程修了の認定
本研究科3専攻をまとめて記述すると、課程の修了要件(大学院学則第40条)の原則は「大学院に2年以上在学し、講義24単位、演習8単位、合計32単位以上を修得し、かつ必要な研究指導を受けた上、修士論文の審査及び最終試験に合格すること」となっている。
修士論文の審査及び最終試験(同学則第41条)は、「口述又は筆記試験によって行う」もので、その合否は、研究科会が選出した3人以上の審査委員の報告に基づいて研究科会が決定する、こととなっている。
論文審査及び最終試験に合格した者に対して研究科会は課程修了の認定を行い、学長が修士の学位を授与している。
本研究科3専攻の修士の学位記は下記の通りである(学位規程第42条)。 |
南島文化専攻 |
修士(文学又は社会学) |
英米言語文化専攻 |
修士(文学) |
人間福祉専攻 |
修士(社会福祉学又は臨床心理学) |
(注) |
南島文化専攻社会文化領域の場合は修士(社会学)、他の3領域は
修士(文学)、人間福祉専攻社会福祉学領域の場合は修士(社会福祉学)、 臨床心理学領域の場合は修士(臨床心理学)である。 |
提出された修士論文の審査にあたっては指導教員(演習担当者)を含む3人以上の審査委員から成る審査委員会を構成し、その主査には指導教員以外の専任教員を充て、指導教員は副査に当たることになっている。また、もう1人の副査は、他の領域の専任教員が当ることになっており、他の領域からの審査員の参入によって論文審査の透明性・容観性が保証されている(論文審査等取扱要項第3条)。
さらに同「取扱要項」には「研究科会が必要と認めたときは、他の大学院、研究科、研究所等の教員等の協力を得ることができる」ことになっており、大学院生の研究分野の多様化につれて、今後他の大学院等の協力を仰ぐことが多くなることが予想される。
本研究科開設以来、過去5年間の学位授与の実績は、下表のとおりである。その内訳は、一般学生32人、社会人学生30人、外国人留学生7人である。
区 分 |
1998 |
1999 |
2000 |
2001 |
2002 |
合 計 |
南島文化専攻 |
15 |
7 |
11 |
11 |
18 |
62 |
言語文化領域 |
4 |
0 |
0 |
1 |
4 |
9 |
民俗文化領域 |
6 |
5 |
1 |
5 |
9 |
26 |
先史・歴史文化領域 |
1 |
1 |
2 |
1 |
1 |
6 |
社会文化領域 |
4 |
1 |
8 |
4 |
4 |
21 |
英米言語文化専攻 |
/ |
/ |
1 |
3 |
3 |
7 |
英米言語文化領域 |
/ |
/ |
1 |
2 |
2 |
5 |
英語教育文化領域 |
/ |
/ |
0 |
1 |
1 |
2 |
合 計 |
15 |
7 |
12 |
14 |
21 |
69 |
(注) |
人間福祉専攻2領域は2003年度開設のため、未だ完成年度に達していない。 |
上記のように、本研究科の在学年数の標準は2年であるが、優れた実績をあげた者については、1年以上在学すれば足りることになっている(大学院学則第40条第1項但し書)。このような標準在学年数未満の修了者については、あくまでも「優れた実績をあげた者」を対象とすべきであり、その審査にあたっては慎重を期するべきである。現在までのところ、本研究科においてはこのような事例はない。
今までのところ、規定を遵守して実施されており、新たな問題が生じない限り、今後も規定どおり実施して行く考えである。
第2節 地域産業研究科
(1) 教育・研究指導の内容等
【現 状】
@ 教育課程
ア、教育課程の基本構想
本研究科は一専攻であるが、教育研究の領域は、第一章第3節第2項に掲げたように6つの教育研究領域に分かれている。これらの教育研究領域は、カリキュラムの中で独立したものではなく、教員及び学生が系統的に専門深化させるための概念上の便宜的区分に過ぎない。
応用計量経済領域は、計量経済学的手法の実社会への応用について教育研究することを中心としており、実務現場での数量的・客観的な情報分析・予測能力を付与し、深化させることを目的としている。
沖縄経済領域は、基地経済の比重が大きく、国内の大市場圏から隔絶している等、歴史的・地理的に特殊性を有する沖縄県の経済構造について実証的に研究することを中心としており、地域の視点から、経済動向に関する洞察・応用能力を付与し、深化させることを
目的としている。
産業組織領域は、産業組織を理論的・実証的・政策的に研究することを中心としており、社会経済システムの変化と産業組織の動向に関する洞察・応用能力を付与し、深化させることを目的としている。
地域流通領域は、その歴史的・地理的特殊性を踏まえて、沖縄県の流通システムについて実証的に研究することを中心としており、地域的及び国際的視点から、流通システムに関する洞察・応用能力を付与し、深化させることを目的としている。
日本的経営領域は、技術革新下における日本的経営の分析を通じて、沖縄県の企業経営について実証的に研究することを中心としており、地域の視点から企業経営に関する分析・洞察能力を付与し、深化させることを目的としている。
会計領域は、会計情報の測定と伝達の分析を通じて、沖縄県の企業会計について実証的に研究することを中心としており、情報化が進展する中で企業財務に関する分析・洞察能力を付与し、深化させることを目的としている。
イ、教育課程
本研究科は、学校教育法第65条と大学院設置基準第3条第1項を踏まえるとともに、企業・行政等の実務現場で中核的な役割を担える人材の養成を教育目標としていることから、教育課程の編成に際しては、専門性を深めると同時に、一領域に偏ることなく、可能な限り、隣接領域や周辺領域の知識も付与することにより、実務応用能力を高めることができるよう、科目設定や履修方法に配慮している。
具体的には、まず、科目設定に関して、第1には、効果的に専門性を深めさせる観点から、6つの領域のそれぞれについて、演習と当該演習を履修する上で必要な知識を付与する講義を一組として領域を設定し、専門性を形成するための基幹科目群をパッケージ化した。第2に、実務応用能力に富んだ専門性を付与する観点から、「専門深化を支援する講義科目群」と「複合的に視野を広げるための特別講義科目群」とを設定した。分けても、「複合的に視野を広げるための特別講義科目群」は、県外講師陣による集中講義方式の講義科目群であり、広い視野の涵養と専門性の深化の両立を図るという観点に立って、沖縄県内においては受講機会の極めて少ない各分野の著名な研究者等の講義科目を設けることにより、沖縄県内だけに焦点を合わせた偏った知識の深化を避け、複合的に知識を広げる機会を確保するために設定したものである。
次に、履修方法に関しても、第1に、カリキュラム全体としては本学教員及び県内講師による演習及び講義を履修するだけで課程修了に必要な単位の取得が可能なように配慮している。第2に、演習に関し主専攻と副専攻を設けることにより、学生個々のニーズに合致し実務応用能力に富んだ複合的な専門性の深化が図れるよう配慮している。第3に、「複合的に視野を広げるための特別講義科目群」については、課程修了のための履修単位数としては4単位を上限として認定するものの、その履修には一切制限を設けないことにより、学生の意欲に応じて、県内では受講機会の極めて少ない著名な講師陣による隣接学術分野や周辺学術分野の知識を修得できるよう配慮している。教育課程の基本構造は次表のとおりである。
区 分 |
開設科目数
|
修了に必要
な単位数 |
担 当 者 |
特殊研究T |
特殊研究U |
講 義 |
主専攻の演習及び講義 |
9 |
9 |
9 |
12 |
本学教員(9名) |
副専攻の演習 |
9 |
/ |
/ |
4 |
本学教員(9名) |
専門深化を支援する
講義科目群 |
/ |
/ |
17 |
12〜16 |
本学教員(12名)
及び
県内兼任講師(1名) |
複合的に知識を広げる
ための特別講義科目群 |
/ |
/ |
9 |
4 |
「県外非常勤講師」
(9名) |
ウ、商経学部との関連
本研究科の演習や講義を担当する本学教員はすべて商経学部教員である。
本研究科は、商経学部を構成する経済学科及び商学科を基礎として設置されている。この二つの学科では、国際化、情報化、高学歴化、経済のソフト化等に対応でき、従前にも増して地域の産業振興に有用な人材を育成するため、1995年度より、大幅なカリキュラムの見直しを行っており、学習の目的意識や専門的知識の体系化を指向した履修上のコース制を導入している。また、商経学部付置の産業総合研究所では、1995度より、主に商経学部教員を主体とした学際的な共同研究を行うとともに外部データベースとの接続や統計解析用ソフトウェア整備を進めており、本研究科の教員や学生の研究活動を支援する重要な関連機関として位置づけている。
A 単位互換、単位認定等
本研究科では、他大学院との間での単位互換や単位認定は実施していない。これは、次に掲げる理由による。
ア、 |
本研究科が商経学部に基礎を置いているため経済学・経営学・商学・会計学・情報工学等広範な教育研究分野をカバーし得る教員層が存在すること。 |
イ、 |
本学商経学部教員による講義科目の外延的拡充を図ることにより本研究科を担当する教員の層を厚くし研究科としての持続能力の維持・向上に主眼を置いていること。 |
ウ、 |
本章第2節第1項のロに記したように本研究科はカリキュラムの中に「複合的に視野を広げるための特別講義科目群」を設けており、沖縄県内においては受講機会の極めて少ない各分野の著名な研究者等の講義科目を適宜開講可能であること。 |
しかし、平成14年度より、札幌大学大学院経済研究科との間で、教員の研究交流を始めており、当面はシンポジウムや研究会などによる地道な教員交流を行い、両研究科間の補完関係のあり方を見定めた上で、可能ならば、将来的には、単位互換や単位認定も含めた大学院間協定へ発展させるための基盤作りに着手したところである。
なお、本研究科では外国の大学院との単位互換制度は導入していない。
B 社会人学生、外国人留学生等への教育上の配慮
一般社会人・有職者の学習の便宜を図るため、大学院設置基準第14条の特例を受け、授業科目を月曜日から土曜日までの昼夜に配置している。特に、修士論文作成のための必修科目である演習T及び演習Uは土曜日の3校時〜5校時に開講している。また、「県外非常勤講師」による「複合的に知識を広げるための特別講義科目群」については、夏期及び春期休暇期間中に集中講義形式で開講している。
外国人留学生については、個々の留学生に応じてそれぞれの母国語で講義を行うことは非現実的であることから、通常の講義は日本語で行っている。本研究科への入学に際しては、語学力(英語長文読解)や専門知識に関わる筆記試験のほかに面接による口頭試問も行っており、日本語の理解力についても評価している。また、修士論文には日本語と英語のいずれかを使用できることとしている。
この他、一般社会人・有職者そして外国人留学生には、勤務事情等や文化的異質性等の個別事情があることから、指導教員によるきめ細かい個別指導を心がけている。
C 生涯学習への対応
生涯学習社会における地域住民の学習ニーズへの対応は、本研究科設置の理念の一つであり、先にも記したように、大学院設置基準第14条の特例を受けた所以である。
D 研究指導等
特殊研究はT、Uで編成されており、それぞれ1年次、2年次に配当されている。そし
て、必修科目としている指導教員担当の特殊研究Uが、事実上、修士論文の作成指導に位置づけられている。また、指導教員が、学生が履修しようとするカリキュラムの趣旨・内容を十分理解した上で研究指導を適切に行うことができるよう、本研究科の学生に履修登録時にオリエンテーションを行い、指導教員と十分に相談するよう指導している。
具体的な研究指導の態様を示すと次のとおりである。本研究科の学生には、入学試験時に主専攻とする研究領域を確定させている。第1学年では、主専攻の特殊研究担当教員の研究業績も含め、当該研究領域における既往の研究業績を整理させると共に、研究方法や研究態度そして論文の書き方について指導している。第1学年末を目途に、修士論文作成に向けて研究課題を整理させ、研究課題の意義、研究方法、既往の研究業績について概要を整理させ、特殊研究担当教員に提出させている。第2学年の前期で、既往の研究の精査と必要な資料・データの収集及び基本的な分析を行わせている。毎年、第2学年の10月に中間報告会を開催し、指導教員だけでなく他の本研究科担当教員からも指導・助言を得られるようしている。なお、修士論文の作成は、主に、指導教員が個別に指導しているが、修士論文の内容のさらなる充実を図る観点から必要がある場合には、学生の研究課題に即して他の本研究科担当教員を補佐的に指導する教員に当てている。
【点検・評価】
上述の如く、本研究科では、基礎的知識を集中的かつ効果的に習得できるように講義科目を編成するとともに、演習を加えて修士の学位を取得するに充分な教育課程の構築に配慮している。また、本研究科の教育課程は大学院設置基準第3条に定める「広い視野に立って精深な学識を授け、専攻分野における研究能力または高度の専門性を要する職業等に必要な高度の能力を養う」という目的にも適合するよう努めている。
社会人学生、外国人留学生への教育上の配慮も含め、研究指導は、基本的に指導教員による個別指導により行っており、また、学生には、特段の事情がある場合には、入学後においても指導教員の変更を行うことが許されていることから、充実した研究指導が行えるよう配慮している。
しかし、入学者の学部段階における知識の習得状況は必ずしも均質ではなく、かつ幅広い素養が欠如している面があることも否定できない。さらには、学生の習得知識に関するニーズも多様化しており、学生間の基礎知識の均質化やカリキュラム内容の充実は重要な課題である。
【改善・改革方策】
主に社会人学生に主眼をおいて、勤務状況等に合わせて弾力的に単位取得が行えるようにするため、2003年度より、講義科目を従来の通年4単位制から半期2単位制に切り替えた。
学生間の基礎知識の均質化については、オリエンテーションや日々の個別指導の中で、いわゆる自主ゼミ形式による勉強会、輪読会、研究会の実施を強く促している。本研究科は修士課程のみであり、また、社会人学生も多いことから、このような学生による自主ゼミを全員参加によって恒常的に継続させることは困難であるが、学年によっては自主ゼミを行っている。
カリキュラム内容の充実については、本研究科開設時には演習科目が5科目、講義科目が13科目であったが、第6章第2節に掲げる本研究科担当教員の資格基準に基づき、2000年度からは演習科目を9科目、講義科目を17科目に増やし、さらに、2003年度からは演習科目は据え置いたものの、講義科目を22科目に増やすなど、学生のニーズの多様化に対応すべくカリキュラムの充実に努めている。
本研究科の教育研究のための人的体制については、第1章第3節第2項で記したように、2004年度から商経学部の改組が行われることに伴う本研究科の改革動向にもよるが、当面は、現行の教育課程に関する改善・改革方策を継続していくこととしている。
(2) 教育・研究指導方法の改善
【現 状】
@ 教育効果の測定
最終的には、修士論文の内容水準により判定する。しかし、日々の教育効果の測定は、講義科目、演習を問わず、学生から提出されるレポートや研究報告及び授業への出席状況によって測定している。教育・研究指導の効果は学生の成績によって表現されるが、それは大学院学則第38条によって、優、良、可、不可の4段階をもって表示し、優、良、可の成績には当該科目の単位を認定している。
修士論文の審査に際しては、各論文ごとに、主専攻の演習の担当教員を含む本研究科担当教員3名以上からなる審査委員会を設置し、審査している。最終試験は、論文の審査終了後、審査委員会が論文を中心として口述又は筆記試験により行っている。
A 成績評価法
本研究科での成績評価は、修士論文を除いて、担当教員に委ねられており、学生の資質向上の状況を検証する仕組みは特に設けていない。しかし、複数の審査委員によって修士論文の審査を行っており、実質的かつ客観的に学生の資質の向上の状況について検証が行えるよう努めている。
B 教育・研究指導の改善
本研究科では、毎年度、『大学院便覧』を発行し、その中にシラバスとしての「授業案内」を掲載している。
本研究科の教育・研究指導は、個々の担当教員に委ねられているので、教育・研究指導方法の改善を促進するための組織的な取り組みは行っていない。また、学生による授業評価については、本研究科担当教員各自にその実施を委ねている。
【点検・評価】
本研究科では、修士課程における教育効果は修士論文に結実されると認識しており、本研究科担当教員全員が出席する中間報告会、複数の教員からなる修士論文の審査員会を制度化していることから、学生の教育効果の測定は客観的かつ明瞭に行われていると考えている。
また、成績評価法に関しても、同様の理由から、現時点では、現行の方法に改善を加えなければならない積極的な理由は見いだせない。
さらに、教育・研究指導方法の改善を促進するための学生による授業評価の導入は極めて一般的となっているが、次の理由から、その実施に当たっては、事前に充分な検討が必要であると考えている。
ア、 |
本研究科では個別指導が前提となっており、また、一講義科目当たりの受講者も比較的少数であることから、教員と学生の間の意思疎通は相対的に容易であり、組織的な取り組みを行わずとも、教育・研究指導方法の改善を促す契機は日常的に存在すること |
イ、 |
学生による授業評価を記名で行い、第三者立ち会いの下で教員と学生双方の主張を裁定し、両者の齟齬を解消する方式を採用するならば、学生による授業評価は教育・研究指導方法の改善にとって極めて有効であると思慮されるが、このような方式を採用するためには担当教員全員の合意と学生のモラル・ハザードの解消を前提として、精緻な制度の構築を行うことが肝要であること |
【改善・改革方策】
学生にモラル・ハザードが存在しないという前提に立てば、学生の授業選択行動に基づいて、演習科目や講義科目の淘汰が行われるものと思慮される。従って、教育・研究指導方法の改善を自律的かつ継続的に実施していく観点からは、教員間に授業内容に関する競争的環境を創出することも重要であり、本研究科の教育研究のための人的体制については、第1章第3節第2項で記したように、2004年度から商経学部の改組が行われることに伴う本研究科の改革動向にもよるが、当面は、第6章第2節に掲げる資格基準に基づき本研究科担当教員の増員に努めることとしている。
(3) 国内外における教育・研究交流
【現 状】
国内の教育研究機関との交流については、本章第2節第1項で記したように、札幌大学大学院経済研究科との研究交流が緒に就いたところである。なお、本研究科は、国外の教育研究機関との間の組織的な教育研究交流は行っていない。
【点検・評価】
一時的な実績確保に走ることなく、持続性と生産性に主眼を置いて、地道に効果的な研究交流を先行実施し、時機を得て教育交流に発展させたいと考えている。
【改善・改革方策】
札幌大学大学院経済研究科との研究交流が緒に就いたところであるので、具体的なタイム・スケジュールを明示することは不可能であるが、本年度は本学において、札幌大学及び鹿児島国際大学との大学院間研究交流会を主催することとしている。
(4) 学位授与・課程修了の認定
学位授与
【現 状】
本研究科では、本研究科に2年以上在籍し、主専攻(演習と講義)12単位及び副専攻(演習)4単位、本章第1節第1項で記した「専門深化を支援する講義科目群」並びに「複合的に知識を広げるための特別講義科目群」の中から16単位以上、合計32単位以上を取得し、かつ、修士論文の審査と最終試験に合格すること、を学位授与の要件としている。なお、修士論文の審査に際しては、各論文ごとに、主専攻の演習の担当教員を含む本研究科担当教員3名以上からなる審査委員会を設置し、審査している。最終試験は、論文の審査終了後、審査委員会が論文を中心として口述又は筆記試験により行っている。授与する学位の種類は、次のとおりである。
領 域 名 |
授与する学位の種類 |
応用計量経済、沖縄経済、産業組織 |
修士(経済学) |
地域流通、日本的経営、会計 |
修士(商 学) |
本研究科開設以来、過去4年間の学位授与の実績は、下表のとおりである。その内訳は、社会人24名(修士(経済学)11名、修士(商学)13名)、日本人学生28名(修士(経済学)21名、修士(商学)7名)、留学生2名(修士(経済学)2名)である。
区 分 |
1999 |
2000 |
2001 |
2002 |
合 計 |
修士(経済学) |
9 |
6 |
11 |
8 |
34 |
修士(商 学) |
4 |
9 |
6 |
1 |
20 |
合 計 |
13 |
15 |
17 |
9 |
54 |
【点検・評価】
本研究科では、学位審査の透明性・客観性を高めるための措置は特に導入していない。しかし、本研究科修了者については修士論文を発展させた論文を本研究科紀要『地域産業論叢』投稿する機会を与えている。当該紀要には査読制度を導入しており、本研究科修了者の投稿原稿ついては指導教員以外の教員に査読させ、論文若しくは研究ノートとして掲載している。このことから、部分的・間接的ではあるが、各教員には学位審査の透明性・客観性を高めるためのインセンティブが働いているものと考えている。
しかし、当該紀要へ投稿した本研究科修了生は、第1集(2002年3月)5名、第2集(2003年3月)4名、第3集(2004年3月発行予定)6名と、全修了者54名のうち15名に留まっている。これは、次に掲げる理由によるものと判断している。
ア、 |
修了者54名中24名が社会人(44.4%)であり、日常の業務に追われて投稿する余裕がないこと。 |
イ、 |
本研究科修了者のうち、博士後期課程に進学した者が2名、進学予定の意志が明瞭な者が2名であり、修了者を全体で見ると、紀要へ投稿するインセンティブが希薄であること。 |
【改善・改革方策】
本研究科の教育研究のための人的体制については、第1章第3節第2項で記したように、2004年度から商経学部の改組が行われることに伴う本研究科の改革動向にもよるが、現時点では、学位審査の透明性・客観性を高めるため特段の措置を導入する予定はない。しかし、学位審査の透明性・客観性を間接的に担保する措置として、本研究科紀要等査読制度の完備された学会誌・紀要への投稿をより一層奨励する必要はあると考えている。このため方策としては、学生の主体性を重んじる観点からは、本研究科担当教員による日常的な学生への啓蒙活動しかなく、具体的な改善方策を提示することはできない。
第3節 法学研究科
(1) 教育・研究指導の内容等
【現 状】
@ 教育課程
ア、教育課程の基本構想
法学研究科は一専攻であるが、公法・基礎法領域と民・刑事法領域の2領域からなる。これら二つの領域は、カリキュラムのなかでの独立した実体的区別ではなく、教員と学生がその専門分野を深化させるための教育研究上の便宜的区別にすぎない。それゆえ、ある領域から他の領域に変更を例外的に認めることもありうる。
公法・基礎法領域では、憲法という実定法の根幹部分をなす科目と行政法という現代的分野科目、そしてこれら実定法の基盤となる法の思想的・歴史的・社会的背景を理解するための法哲学や法制史などからなる。また準実定法ともいわれる国際法も含まれる。
民・刑事法領域では、柔軟で創造的な思考力や深い洞察力を涵養するための基本実定法領域からなる。ここでは、民法、商法、民訴や刑法、刑訴等各科目の個別テーマの研究は、その問題についての学説・判例や立法論を踏まえた精緻な解釈論の形で、進められる。
インターンシップは、法律事務所、県民生活センター、地方議会事務局等での夏期休暇の3週間の実体験を通して、これまで学習した理論の応用や可能性を習得する。
本研究科は昼夜開講制をとっており、社会人学生が無理なく履修できるよう配慮されている。
イ、教育課程
本研究科は、官公庁や民間における各種団体・組織・研究機関等の指導的立場にたつ将来のリーダーを養成することを目的とする。したがって、教育もそのような観点からなされる。まず、本専攻では2年間の修了年限を要し、所定科目の32単位以上を履修し、かつ修士論文の審査及び最終試験の合格が必要である。学生は入学試験で選択した研究領域で、その必修科目である特殊研究T及び特殊研究Uを中心にその領域内の関連科目を履修する。
本専攻は二つの領域からなっており、それぞれの専門性を深めながらも、二つの領域からのカリキュラムを学ぶことができるようになっている。また、セメスター制を採用している。これは1学年を前期と後期に分けて2学期制にしたものである。特殊研究Tと特殊研究Uは通年演習科目である。
ウ、学部との関連
本専攻の講義を担当する兼担教員はほとんどが法学部の教授であり、学部でも講義を担当しながら、学部教育の基礎の上に本専攻の教育を実践している。
A 単位互換、単位認定等
今までのところまだ実施されてない。しかし、将来は学部同様できるだけ協定を締結すべきである。なお、本学の「大学院学則第35条」には、他の大学院との協議に基づき、10単位を越えない範囲で他の大学院の授業科目を履修できるように配慮してある。また、入学前他の大学院において修得した単位についても、10単位を越えない範囲で認めることができる。単位の認定は「大学院学則第38条」に則り、試験または研究報告により担当教員が行うことが原則だが、他の大学院での修得単位の認定は研究科会の議を経る必要がある。
B 社会人学生、外国人留学生などへの教育上の配慮
社会人、有職者学生の便宜を図り、夜間その他特定の時間(土曜日の13時以降)に授業を行うことを原則としている。また、夏期休暇中に2科目4単位以上の集中講義を夜間行うことにしている。
C 研究指導等
修了に必要な32単位の履修方法については、1年目の前期に12単位以上、後期に12単位以上履修し、1年目で28単位ほど履修し、2年目は修士論文指導を中心とする特殊研究U(演習・4単位)に専念するよう指導している。なお、オフィスアワーを通しても日常的な指導は行っている。
【点検・評価】
本研究科は、平成15年4月に開設され間もないため、その理念・目的・教育目標についての点検・評価は不可能である。しかし、これらを達成するため、目下、鋭意努力しているところである。
【改善・改革方策】
本研究科の理念・目的・目標の充実・完成を図って今後とも努力する。そうすれば、2年後の完成年度には、これらのことはほぼ実現しているものと思われる。
(2) 教育・研究指導方法の改善
【現 状】
@ 教育効果の測定
教育効果の測定は、試験または研究報告により行う。筆記試験、研究レポート、口述面談のいずれの測定方法も可としている。成績の評価は、優、良、可、不可の4段階評価で、優、良、可を合格としている。優は80点以上、良は70〜79点、可は60〜69点、不可は59点以下の基準である。
A 成績評価法
研究科としての統一的評価法はない。成績評価は、各講義科目において担当教員に一任されている。学生の意欲、知識、理解、技能等を総合的に判断してなされる。評価の客観性をどう統一するかは今後の課題であるが、実質的・客観的に学生の資質の向上の状況について検証が行えるよう努めている。
B 教育・研究指導の改善
『大学院便覧』を毎年発行し、シラバスとしての講義案内を掲載している。また研究科会で絶えず取り上げ、検討し、改善していくことにしている。さらに、年2回ほど学生に講義内容の評価をしてもらうことにしている。
【点検・評価】
すでに述べた如く本研究科は開設後間もないため、点検・評価は今のところ無理である。今後の推移をみながら検討したい。
【改善・改革方策】
今後2年間の推移の中で検討する。
(3) 国内外における教育・研究交流
【現 状】
国内、国外とも現在のところ交流してない。しかし、学部では国内・国外とも10ヶ所の大学と教育・研究の交流がなされている。
【点検・評価】
今や学問のみに限らず情報・その他あらゆるものがグローバル化している。学部でも国内・国外の大学と教育・研究の交流がなされているのだから大学院においてはなおさらその必要性を感じる。
【改善・改革方策】
完成年度の2年間でどの大学院とどのような方法で交流をするか慎重に検討し、早めに交流を進めたい。
(4) 学位授与・課程修了の認定
【現 状】
修士論文の審査は、所定の科目につき32単位以上を修得したかまたは修得見込みのある者が論文を提出したときに行われる。審査委員会は指導教授を含む3人以上の審査委員で構成し、主査は指導教授が担当し、1人は他の領域から加わる。他の領域からの審査員の参入によって論文審査の透明性・客観性が保障されている。最終試験は、論文審査終了後、審査委員会が論文を中心に口述か筆記試験で行う。
【点検・評価】
次年度より修了生を輩出する予定であり、学位授与・課程修了の認定手続きを適切に実施する所存である。
【改善・改革方策】
完成年度以降の課題である。