沖縄国際大学 平成16年度 点検・評価報告書

本   章

第7章 研究活動と研究体制の整備

 第1節 地域文化研究科

 第2節 地域産業研究科

 第3節 法学研究科

 第4節 南島文化研究所

 第5節 産業総合研究所

 第6節 沖縄法政研究所




第1節 地域文化研究科

(1) 研究活動
【現 状】
 ア、 研究活動の指表となる研究成果は、本研究科の紀要『地域文化論叢』及び所属する学内学会の機関誌『日本語日本文化研究』、『社会文化研究』、『外国語研究』、『人間福祉研究』、『総合学術研究紀要』等を通して発表される。『地域文化論叢』は、原則として、本研究科教員及び本研究科の在籍者及び在籍した者の投稿論文を2名の査読者の推薦承認に基づいて掲載するもので、1998年から2003年までに5巻〔学術論文14本〕発行されているが、本研究科兼担教員の学術論文は4本である。
 イ、 本研究科兼担教員の1997年度から2002年度までの6年度間の研究業績は次表のとおりである。
  著  書 学術論文 翻  訳 その他 合計 1人
平均
1 人
年平均
単著 共著 単著 共著 単訳 共訳
南島文化専攻12人 6 23 104 2 2 2 0 139 11.6 1.9
英米言語文化専攻
10人
0 5 49 1 1 0 1 57 5.7 1.0
人間福祉専攻6人 8 32 31 36 36 0 1 144 24.0 4.0
合計  28人 14 60 184 39 39 2 2 340 12.1 2.0
(注) 研究ノート、テキスト、資料、エッセイ、参考書などはその他に含める。

ウ、1997〜2002年度の6年間の本研究科兼担教員の学会出席及び調査
1997
1998
1999
2000
2001
2002
合計
学会出席(延回数)
27
31
48
33
29
39
207
調  査(延回数)
35
36
42
42
33
36
224
エ、1997〜2002年度の6年間の本研究科兼担教員の学外からの委嘱による調査
   1997年2件  1998年2件  1999年1件   2000年2件
   2001年3件  2002年2件  合計 12件である。
オ、1997〜2002年度の6年間の本研究科兼担教員の学外研修(1年)状況
 
1997
1998
1999
2000
2001
2002
合計
国 外(人)
1
1
1
1
1
0
5
国 内(人)
1
0
0
1
1
1
4
合 計
2
1
1
2
2
1
9
 全員本学資金によるもので、学外資金による学外研修者はいない。
 教育研究組織単位間の研究上の連携については、学内の「南島文化研究所」の宮古・八重山など先島諸島の調査活動、講演会活動(市民講座、学内講演会)、研究会活動(島研究会、近世史研究会)に積極的に参加し、特に南島文化専攻と人間福祉専攻の兼担教員はその中心的役割を果たしており、その活動成果は授業に反映され、本研究科の教育を充実させている。
 また、「外国語センタ−」のリ−ダ−的存在である英米言語文化専攻の兼担教員は学内の外国語教育の充実を主なる任務と認識し、そのための調査研究活動に専念しつつ、英語教育講演会、高校生「英語ホ−ムペ−ジ・コンテスト」、外国人留学生「日本語スピ−チ・コンテスト」などを企画している。それら活動の成果は授業に反映され、本研究科の教育の充実に役立っている。

【点検・評価】
  本研究科兼担教員の過去6年間の全研究業績は340点、一人当たり12.1点という業績は決して少なくないと考えられる。本研究科兼担当教員の研究活動は活発であると言える。但し、英米言語文化専攻は尚一層の努力をすべきであろう。また、本研究科の機関誌『地域文化論叢』はすでに5巻を発刊しながら兼担教員の学術論文は4点しかない。十分に活用されているとは言いがたい。院生をはじめ修了者の投稿を督励するためにも一層意識的に活用することが望まれる。
 研究活動を推進していくためには資金が必要である。今までの研究活動の主要財源は学内資金であったが、今後は学外資金を獲得する努力が必要である。産官学協調が叫ばれて久しいが、本研究科においては産官の活用が十分とは言えない。科学研究費補助については次項で触れるが、上記エで触れたとおり「学外からの委嘱による調査」は6年間で12件にすぎない。それらもほとんど沖縄県からの委嘱によるもので調査も県内に限られている。
 県内・国内の他大学院との研究上の連携、国際的な連携も深めるべきであるが、学内の諸事情のため、今までのところ手付かずの状態である。

【改善・改革方策】
 学外資金の活用については、2002年度から本学の研究助成制度が科学研究費申請者を優先する措置が取られており、今後科学研究費申請者が増加するであろう。
 また、県内外の大学院との連携について、その可能性を早急に検討する必要がある。2004年度内に県内の琉球大学、名桜大学の大学院との連携について、研究科会で検討する。


(2) 研究体制の整備
【現 状】
 本研究科の教員は本学の学部に所属する教員であり、学外研究制度(国内・国外)、研究助成費の支給等、本研究科兼担教員の研究条件(研究個室、研究時間)は学部と同じである。
 学外研究制度は、各年度国内2人、国外2人であり、1998年度から2002年度まで本研究科兼担教員でこの制度を活用した教員は、国内4人、国外5人である。
 全教員の年間研究助成費は過去5年間毎年度50万円を限度として、研究旅費・学会出張・研究図書購入費にそれぞれ充当可能である。但し、購入した図書は本学図書館に返還しなければならない。
 本研究科の開設にあたり、基本図書整備費用として、次表のとおり予算が計上された。南島文化専攻と英米言語文化専攻については、執行済みであるが、人間福祉専攻については今後執行予定である。
 
金 額
年 度
南島文化専攻
3,000万円
1996〜1998
英米言語文化専攻
1,500万円
1996〜1998
人間福祉専攻
500万円
2003〜2004
合 計
5,000万円
 
 その後、図書館所蔵の基礎資料購入費として専攻毎に予算が計上され、また本研究科生の共同資料室用図書購入費として領域毎に一定の予算が確保されている。ただし、それは3万円程度のものである。
<基礎資料購入費>
(単位:万円)
 
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
合計
南島文化専攻
200
240
240
240
240
240
240
1,640
英米言語文化専攻
40
80
80
100
100

400

人間福祉専攻
100
100
 基礎資料購入予算は、多ければ多い程資料の充実につながり好ましいことであるが大学財政全体の中で考えるべきことである。
 競争的な研究環境を創出するため、本学においては学内資金による4制度と学外資金による1制度がある。学内資金による制度は、「(1) 共同研究費交付制度」、「(2) 研究成果刊行奨励費交付制度」、「(3) 学会発表助成制度」、「(4) シンポジウム・学会等助成制度」、学外資金による制度は「宇流麻学術研究助成制度」である。
 これらの5制度の運用(助成金の配分決定など)については、教務部長と各学科選出の委員で組織する研究助成費審査委員会を設け、教員個々人から提出された助成申請書の審査を実施している。特に(1) 共同研究費交付の審議においては、詳細な基準を設け不公平が生じないよう慎重を期している。
 1997〜2002年度の6年間に本研究科兼担教員のうち科学研究費を受給した者は次の通りである。
      個人研究 3人、受給額合計 810万円
      共同研究 4人、受給額合計3,880万円
<本学を研究組織とする科学研究費及び他の学外からの研究助成の受給状況>
研  究  課  題
研究種別等
研究期間
(年度)
共同・単独の別
研究組織の人数
学内者
学外者
沖縄の社会に関する研究
重点領域研究
1997〜99
共同
3
3
0
韓国全羅南道及び済洲島と沖縄の文化・社会の比較研究
国際学術研究
1996〜98
共同
11
6
5
琉球語与那方言の音声の緊急調査研究
特定領域研究
(2)
2000〜02
個人
1
1
0
沖縄県宮古島における先史時代の生計活動
基礎-研究
(B)(2)
2000〜02
共同
3
2
1
中国福建省福州及び泉州と沖縄の文化・社会の比較研究
基礎研究
(B)(2)
2000〜02
共同
13
4
9
沖縄士族門中の親族的特徴に関する比較民俗学的研究
基礎研究
(C)(2)
2000〜02
個人
1
1
0
戦後沖縄における米軍政府の保健医療政策の検証
特に医介輔制度を中心として
基礎研究
(C)(2)
2001〜03
個人
1
1
0
 研究上の成果の公表、発信、受信等については、研究成果は「紀要」などにより公表し、国内諸機関に発送している。また、国内他大学・研究機関からの「紀要」などの刊行物を受け入れ、教員及び大学院生が随時閲覧できるよう配慮している。当分は、現在のままで進めて行きたいと考える。

【点検・評価】
 研究助成費50万円については、各年度単位の予算と位置づけられ、繰越による利用は認められていない。その大きな理由は、各年度毎に50万円相当の研究を行うべきである、というものである。今後は、それぞれの教員の研究態様を勘案して、柔軟な利用を認めるよう配慮してもよいのではないかと思われる。
 「共同研究費」は全教員を対象とした競争的研究費で、1997〜2002年度は1,500万円、2001〜2002年度は1,700万円であった。本研究科兼担教員の受給状況は下表のとおりである。
(1) 本研究科兼担教員の共同研究費受給状況(1997〜2002)
 
1997
1998
1999
2000
2001
2002
受給者数 (人)(延べ)
9
6
7
6
5
6
受給総額(千円)
3,076
3,017
2,440
2,095
2,811
3,111
 「研究成果刊行奨励費」は申請額の半分以内で上限70万円となっている。本研究科兼担教員でその恩典に浴した者は2人(1997年1人70万円、2000年1人70万円)である。
「宇流麻学術研究助成金」は学外資金によるもので、本研究科兼担教員でその交付を受けた者は2人(1997年1人25万円、2000年1人31万円)である。
「学会発表助成金」は全国的国内学会及び国際学会の場合は航空運賃の実費を助成するが、地方学会に対しては、5,000円の助成となっている。本研究科兼担教員でその助成を受けた者は下表のとおりである。
(2) 本研究科兼担教員の学会発表助成費受給者
 
1997
1998
1999
2000
2001
国 外(人)
2
0
1
0
0
国 内(人)
1
1
6
6
4
合 計
3
1
7
6
4
 「シンポジウム・学会等助成費」はその規程によって1万円〜30万円と多岐にわたり、本学内で行われる国際的シンポジウムに対しては最高額の30万円の助成を行っている。そのお陰で本学におけるシンポジウム・学会等の開催は増加の傾向にある。

【改善・改革方策】
 教員個々の研究態様を確認の上、研究が最も効果的に進展するよう、研究費の利用方法の柔軟性を認めるよう改善が望ましい。
 各種助成金は多ければ多い程、研究意欲をそそる結果になることは確実であるが、大学財政全体とのバランスを考慮する必要があり、現在のままで妥当であろうと思う。但し、学会発表を推進するため、国内・国外を問わず2泊程度の宿泊費実費の助成が望ましい。
 前項でも触れたように、科学研究費の申請をはじめ、学外資金の確保になお一層努力することが肝要である。



第2節 地域産業研究科

(1) 研究活動
【現 状】
 教員の研究活動の状況について記述する。1998〜2002年度の本研究科兼担教員の研究業績を整理すると次表のとおりである。
 
単独著書
共編著書
単著学
術論文
共著学
術論文
単独翻訳
共同翻訳
その他
合 計
総  数
8
21
69
11
0
0
50
159
一人平均
0.6
1.5
4.9
0.8
0
0
3.6
11.4

 1998〜2002年度の5年間の業績総数は159点であり、一人当たり平均11.4点で、1年当たり平均2.3点である。また、単独著書と共編著書が併せて29冊刊行され、単著学術論文と共著学術論文が併せて80点であり、これらの総数は全業績の68.6%である。また、上表の「その他」の欄は、主に、科学研究費等の学外からの研究助成に関わる研究成果報告書及び行政等の公的機関からの委託調査報告書である。
 
 研究における国際連携については、現在までのところ、国際学術研究への研究分担者としての参加が1件あるが、本研究科兼担教員が研究代表者となった国際的な共同研究や海外研究拠点設置の実績はない。
 教育研究組織単位間の研究上の連携に関しては、本研究科は学内の「産業総合研究所」と有機的な連携を前提としており、本研究科兼担教員は全員産業総合研究所所員であることから、当該研究所の調査研究事業に積極的に参加するとともに、当該調査研究から得た知見を授業に反映させることにより、本研究科で行う大学院教育の充実・発展に努めている。

【点検・評価】
 本研究科兼担教員の研究活動については、1998〜2002年度の5年間の業績が一人当たる年平均2.3点であり、学生に対しより良い研究指導内容を提供する観点からも、個々の教員は研究活動の維持・向上に努める意欲と自覚を有していると判断している。この点に関する間接的な根拠として次表を掲げる。
 
単独著書
共編著書
単著学
術論文
共著学
術論文
単独翻訳
共同翻訳
その他
合 計
総  数
10
28
106
26
0
0
75
245
一人平均
0.5
1.5
5.6
1.4
0
0
3.9
12.9
 同表は、2003年度より開設科目の増加に伴い新たに加わる兼担教員の業績も加えて、1998〜2002年度の本研究科兼担教員の研究業績を整理したものであり、同表に基づくと、1998〜2002年度の5年間の業績が一人当たり年平均2.6点に増加する。
 また、他大学等の研究者との交流を通じて、自己の研究の深化と自己啓発を図れるという点では、今後とも、研究分担者として他大学等を研究組織とする共同研究への参加は意義があると考えている。しかし、研究案件の企画・立案とその主導的な遂行も研究者としての自己研鑽を積む上で重要であると考えられることから、本研究科担当教員による学外の研究助成制度の主体的かつ積極的な活用を促す必要があると考えている。
 さらに、研究における国際連携については、本研究科兼担教員による学外の研究助成制度の主体的かつ積極的な活用を促して行くことの延長線上で実現される課題であると考えている。

【改善・改革方策】
 現状の本研究科兼担教員の研究活動状況から見て、研究活動を督励するための特段の措置を講じる必要はないと考えている。しかし、教員の研究活動の状況は、業績数からみた教員の研究者としての評価に終わることなく、学生の研究指導にも影響を与えるものであり、学生にモラル・ハザードが存在しないという前提に立てば、学生の授業選択行動の中に個々の教員の研究活動状況が体現されるものと思慮される。従って、教員の研究活動の維持・向上を促す観点からは、教員間に研究活動に関する競争的環境を創出することも重要であり、本研究科の教育研究のための人的体制については、第1章第3節第2項で記したように、2004年度から商経学部の改組が行われることに伴う本研究科の改革動向にもよるが、当面は、第6章第2節に掲げる資格基準に基づき本研究科兼担教員の増員に努めることが重要であると考えている。
 また、学外の研究助成制度の活用については、2004年度から本学の研究助成制度が科学研究費補助金と連動した仕組みに変更することにより、当面は、科学研究費補助金への申請件数の増加を促すこととしている。
 
(2) 研究体制の整備
【現 状】
 経常的な研究条件の整備に関しては、本研究科の兼担教員は全員本学商経学部の教員であることから、学外研究制度、校費による研究助成等費の支給等、本研究科兼担教員の研究条件(研究個室、研究時間を含む)は学部と同じである。
 競争的な研究環境創出のための措置に関しては、第6章第2節第2項で記述したように、兼担教員の研究活動を奨励するとともに、客観的かつ公正な評価を行う一手段として科学研究費補助金の活用を奨励しているところである。本研究科兼担教員が受給した学外からの研究助成について整理する。それ以前からの継続分を含め、1998〜2002年度の5年間の受給状況は次表のとおりである。
<本学を研究組織とする科学研究費及び他の学外からの研究助成の受給状況>
研  究  課  題
研究種別等
研究期間
(年度)
共同・単独の別
研究組織の人数
学内者
学外者
島嶼地域の農業活性化の一方策としてのエレクトロニック・コマースの活用要件に関する研究
財団法人電気
通信普及財団
1999〜00
単独
1
1
0
沖縄における土地と観光資源・環境の調和的開発・利用の研究
基盤研究
(C)(2)
2000〜01
共同
5
5
0
沖縄における農産物販売戦略としての電子商取引の活用に関する研究
基盤研究
(C)(2)
2001〜03
共同
4
3
1

<他大学等を研究組織とする科学研究費及び他の学外からの研究助成の受給状況>

研  究  課  題
研究種別等
研究期間
(年度)
共同・単独の別
研究組織の人数
学内者
学外者
韓国全羅南道および済州島と沖縄の文化・社会の比較研究(呉錫畢・研究分担者)
国際学術研究
(科研)
1996〜98
共同
12
7
5
農業と関連産業部門の一体化による中国農村合作組織の機能発現に関する共同調査研究
基盤研究
(B)(2)
1998〜01
共同
16
1
15
「辺境」農業・農村の経済的社会的地域固有性とその新たな構築方法に関する研究
基盤研究
(B)(1)
2000〜02
共同
13
3
10
日中韓・東南アジアにおける食糧需給変動と環境変化の比較に関する計量経済分析
基盤研究
(A)(1)
2001〜03
共同
11
1
10
農村生活環境整備の経済評価と生活圏重視の農村整備に関する研究
基礎研究
(C)(2)
2001〜03
共同
7
1
6
基地の返還・移設、跡地利用と沖縄振興問題
基礎研究
(A)(1)
1995〜03
共同
15
1
14
在日米軍基地・自衛隊関連交付金等の地域財政・経済への影響に関する研究
基礎研究
(C)(2)
2001〜03
共同
6
1
5
輪作採用度要因の解明による持続的土地利用に関する研究
基盤研究
(B)(1)
2002〜04
共同
5
1
4
 本研究科兼担教員の学外からの研究助成に関わる研究活動にしては、本学を研究機関とする研究助成の件数に比して、他大学などを研究機関とする研究助成への参加件数は約3倍となっており、現在までのところ、研究代表者としてよりも研究分担者としての研究活動が中心となっている。
  研究上の成果の公表、発信、受信等については、本研究科兼担教員による研究成果は『大学院紀要』等により公表し、国内諸機関に発送している。また、国内他大学・研究機関からの「紀要」等の刊行物を受け入れ、教員や学生が随時閲覧できるよう配慮している。

【点検・評価】
 本研究科の兼担教員であるか否かを問わず、研究条件は教員全員同一である。本研究科の兼担教員は全員本学商経学部の教員であることから、学部教育の空洞化は避けねばならず、現状の研究条件はやむを得ないものと考えている。

【改善・改革方策】
 本研究科の兼担教員であるか否かを問わず、研究条件は教員全員同一であることから、本研究科としての独自の改善・改革方策は検討していない。



第3節 法学研究科

(1) 研究活動
【現 状】
 1998〜2002年度の5年間の本研究科兼担教員の研究業績を整理すると次表のようになる。
 
単独著書
共編著書
論 文
翻 訳
その他
合 計
総  数
2
20
29
4
15
70
一人平均
0.2
2.2
3.2
0.4
1.6
7.7

 1998〜2002年度の5年間の業績総数は70点であり、一人当たり平均7.7点である。また、単独著書と共著は合計22点あり、論文の合計が29点ある。これらの総数は全業績の72.8%である。「その他」の中には、判例解説、研究ノート、調査研究、資料等が含まれているが、学会発表、講演、市民講座等は含まれていない。
 教育研究組織単位間の研究上の連携について、本研究科は学内の「沖縄法政研究所」との連携を密にしている。本研究科兼担教員は全員法政研究所の所員でもあるから、当研究所の調査・研究事業に参加し、そこから得た学識・情報等を授業に反映させ、大学院教育の充実・発展に寄与させている。また『沖縄法政研究』(年1回)と「沖縄法政研究所報」(年2回)を毎年出版している。

【点検・評価】
 研究活動の評価は主として論文、著書、学会発表等の状況で把握できる。本研究科に所属する兼担教員の研究活動は、現状では可もなく不可もないといったところである。

【改善・改革方策】
 個人の研究活動はこれまでどおり維持すべきだが、さらに共同研究とか学際的研究にまで拡大することが望まれる。

(2) 研究体制の整備
【現 状】
 本研究科の兼担教員は全員本学法学部に所属しているので、研究室(個室)、研究費、特別研究費等は、すべて学部と同一である。なお、研究成果の論文等は法学部の発行する『沖縄法学』や法政研究所の発行する『沖縄法政研究』に公表し、全国に発送される。

【点検・評価】
 学部、大学院の如何を問わず、本学教員の研究条件は全員同一である。現在の研究条件はやむをえないものと思われる。

【改善・改革方策】
 研究条件は全員同一なので、本研究科独自の改革方策は打ち出せない。



第4節 南島文化研究所

研究活動
  南島文化研究所(以下、南島研)は、「南島地域の社会と文化の総合的研究」を目的として、1978(昭和53)年4月に設立された。「南島」とは、奄美諸島、沖縄諸島、宮古諸島、八重山諸島を含む地域の古名であるが、本研究所はそれを琉球の別称として用いている。しかし、調査研究の対象地域を琉球に限定することなく、歴史的・文化的に関係が深いアジアの諸地域へも視野を広げ、広義には、台湾・中国南部(福建省を中心とする地域)・東南アジア諸国をも包含する地域を「南島」と定義している。この南島地域の総合的・学際的研究を組織的に行うのが南島研の大きな役割である。
 南島文化研究所の研究活動は、@調査研究の実施、A研究会・セミナーの開催、B研究誌及び所報の編集・発行、C公開講座・市民講座の開催、D資料センターとしての役割、E国際学術交流の6つに大別することができる。それぞれの研究活動は、事務調整会議・事業計画委員会(年15回)・所員会議(年3回)での討議を経て決定されている。研究活動については、以下の通りである。

@ 調査研究の実施 
【現 状】 
 1978年度に与論島と国頭(沖縄本島北部地域)の調査を実施して以来、2002度の石垣島調査(現在調査中)に至るまで、地域調査が継続的に行われている。最近では、1998年度から2000年度までは竹富町の竹富島・小浜島・黒島、2000年度から2002年度は西表島・新城島・鳩間島の調査を実施している。
海外調査については1994年度から韓国・台湾調査を開始し、最近では中国・福建の調査も行っている。

【点検・評価】
 奄美諸島から宮古・八重山諸島まで、20年以上、継続して調査を進めてきた。地域調査報告書も「地域研究シリーズ」として30冊を数えるに至った。最近では、所員の海外研究への指向が強まり、沖縄研究(地域調査)への関わりが減ってきている。

【改善・改革方策】
 ここ数年来、南島研の活性化のためにいろいろ模索し、多面的に検討してきた。その一つは研究活動を支える事務体制の強化である。海外調査に関わる事務が増え、実務の量に見合う人的配置が望まれる。

A 研究会とセミナー
【現 状】
シマ研究会
 沖縄社会のキーワード「シマ」を付した研究会である。そのシマ研究会は、夏期・春期の長期休業期間を除いた第2月曜日に開催している。
日 時
講 師
所 属
テ ー マ
113
2002. 5.13
兼本  敏 沖縄国際大学助教授 近世琉球における中国語のテキスト
114
2002. 6.10
石原 昌家 沖縄国際大学教授 伊江島・阿波根昌鴻さんの土地を守る闘い
115
2002. 7. 8
杉本 信夫 沖縄国際大学兼任講師 沖縄現代の叙事詩 伊江島の抵抗の歌
116
2002.10.28
渡久山長靖 沖縄逓信博物館館長 沖縄の郵便事業について−その変遷を中心に−
117
2002.11.18
小熊  誠 沖縄国際大学教授 現代福建における宗教の復興−姓氏源流研究会と“尋根”を中心として−
118
2002.12. 9
安仁屋政昭 沖縄国際大学教授 戦後の外地引き揚げ
119
2003. 1.20
田野多榮一 元映画監督・古美術壷や
店主
琉球古典焼とは何か

沖縄近世史研究会
 沖縄近世史研究会は、シマ研究会から1991年に分離独立した。社会経済史研究を核とする研究である。年2、3回開催している。
日 時
講 師
所 属
テ ー マ
23
2000. 6.19
小野まさ子 公文書館資料編集室
主任専門員
近世琉球の織を考える
−女性の仕事としての正と負−
24
2001. 1.22
深澤 秋人 沖国大兼任講師 近世琉球の官制における『臨時』組織
25
2001. 7.30
仲宗根将二 元宮古市博物館長 人頭税研究史の流れ
26
2001.12.17
里井 洋一 琉球大学助教授 近世琉球における専売制の起源と展開
27
2002. 7.29
来間 泰男
仲地 哲夫
沖縄国際大学教授
沖縄国際大学教授
人頭税関係論文集(仮題)の刊行について
近世中期における人頭税制の若干の問題について

南島文化研究所セミナー
 南島研セミナーは、1992年に開設された研究会である。本土や海外の著名な研究者が来沖する機会をとらえて、南島研に招聘してセミナーを開いている。最近開催されたセミナーの講師とテーマは、次の通りである。
日 時
講 師
所 属
テ ー マ
12
1998.8.19
池  春相 南島研特別研究員・前全南大学校教授 韓国の家族制度の変容と祖先崇拝
13
1999.1.29
窪  徳忠 東京大学名誉教授・南島研特別研究員 中国の神々と信仰
14
1999.2.13
樋口 恵子 全国自立生活センター協議会代表 障碍(害)者の自立生活を考える
15
1999.7.30
文  大弾 ジャーナリスト・元東亜日報記者 韓国のジャーナリズム
16
1999.12.9
山本 英治 東京女子大名誉教授 現代沖縄における公権力と私の共同結合及び中間機構
17
2000.5.24
池  明観 翰林大学校
翰林科学院日本語学研究所長
日韓関係の歴史と現在

【点検・評価】
 シマ研究会・沖縄近世史研究会・南島研セミナーは、いずれも質量ともに充実してきた。南島研の中核的な研究会として定着したといえる。講師・テーマなどは、分野ごとのバランスを考えて、事業計画委員会において計画的に選定されている。最近では、20人から30人前後の参加者がいる。

【改善・改革方策】
 シマ研究会の報告と討論については、活字にしてほしいという要望が強いが、諸般の事情から実現するに至っていない。研究会・セミナーの成果を刊行物として残していくことが今後の課題である。その改善策の一つとして、シマ研究会・沖縄近世史研究会・人頭税研究会(1999年度終了)などで議論・報告してきたことを、2003年に、『近世琉球の租税制度と人頭税』(日本経済評論社)というテーマで論文集を刊行する予定である。

B 研究誌及び所報の編集・発行
【現 状】
 紀要『南島文化』・地域調査報書
 紀要『南島文化』と地域調査報告書は、年に1回発行してきた。執筆者は、原則として南島研所員・特別研究員(学外研究員)に限られており、事業計画委員会(編集委員会)の検討を経て、所員会議で決定される。2002年3月発行の執筆者とテーマは次の通りである。

紀要『南島文化』(第24号)
執筆者
テ  ー  マ
吉浜  忍
明治期の沖縄における海軍志願兵
新里 幸昭
多良間島のシチウプナカの歌謡−フダヤーとアレーキの神歌−
上原  靜
沖縄諸島における高麗瓦の系譜−韓国済州島出土の高麗瓦との比較−
小川  護
総合学習における地理教育の意味と郷土資料の活用
羅景洙・栗本吉基
湖南と沖縄の洗骨葬の比較研究
来間 泰男
書評・高橋明善『沖縄の基地移設と地域振興』
来間 泰男
書評・石田正治『沖縄の言論人大田朝敷』−その愛郷主義とナショナリズム−
仲地 哲夫
近世中期における八重山諸島の村落と寄百姓−西表島東部の各村落と周辺離島との関係を中心に−
仲地 哲夫
「琉球産業制度資料」の情報化による琉球語彙の研究(2)

地域調査報告書(竹富町調査報告書)
執筆者
テ  ー  マ
増田 昭子
五穀豊穣の神祀り−黒島の旧正月の“場”について−
窪  徳忠
西表島のかまど神信仰(続)
野原 三義
八重山竹富町新城方言の助詞
岩田 直子
西表島における社会福祉実践−民生委員の実践を中心に−
仲地 哲夫
聞き書き:新城島から南風見への移住−1941年の移住体験を中心に−
仲宗根將二
〈資料紹介〉新聞に見る:1946.6〜1950.5戦後初期宮古の八重山開発と移住

南島文化研究所所報
 南島研所報は、年1、2回発行している。昨年度は3月に第49号を発行した。人事・研究会の記事と受贈図書の目録掲載、海外調査報告などの記事を掲載している。所報は、南島研の活動状況を学内・学外に伝える媒介として重要な役割がある。

【点検・評価】
 紀要『南島文化』・地域調査報告書の特徴は、言語・文学・民族・社会・経済・地理・動物・考古・歴史など、多くの学問分野の成果を掲載している点である。論文・調査報告のほか、資料(史料)紹介・書評・学会参加記など、多彩な内容が盛り込まれている。もう一つの特徴は、特別研究員(学外研究員)の寄稿が多い点である。特別研究員の研究成果は海外での研究状況を紹介もでき、または南島研所員の関心の及ばない分野の研究成果に学ぶことも出来る。

【改善・改革方策】
 南島研の研究活動の範囲は年々拡大し、情報量もその分だけ大幅に増加している。そのため伝達したいことや記録しておきたいことも多くなっている。この課題に対処するため、2001年11月にホームページを開設した。そこで事業案内や事業報告など、南島研の基本的な情報を随時提供するようにしている。今後は、所員・特別研究員の研究状況、論文の抄録などをどのように掲載し、発信していくかが課題である。

C 公開講座・市民講座の開催
【現 状】
南島文化公開講座(南島文化地域学習)
 南島文化公開講座は、1987年を最後に学内での公開講座をいったん中止して、学生や教職員を野外に引率して地域学習を行うことにした。しかし、南島文化公開講座という名称はそのまま残している。ここ3年の巡見コースは、渡名喜島・久米島、本島東海岸地域(東村・旧久志村・宜野座村・金武町)、本島島尻地域(佐敷町・知念村・玉城村・具志頭村・東風平町)をフィールドとして学習した。所員や特別研究員を講師として、地域の特性に応じて、自然・文学・経済・地理・歴史などを学んでいる。学生や教職員のほかに、新聞を見て参加する市民もいる。毎年40〜60人の参加者がいる。

南島文化市民講座・地域調査報告講演会
 南島研は、設立当初から「研究成果の地域社会への還元」をモットーにしてきた。1980年2月に第1回の市民講座を開始して以来、沖縄タイムス社・琉球新報社と交互に提携して、2002年度までに24回を数えるに至った。最近の南島文化市民講座の統一テーマ・形式は次の通りである。
南島文化市民講座(2000年度〜2002年度)
回数
日時
共催団体
統一テーマ
備考(形式)
22
2000.12.7
琉球新報社 ハワイ・南北アメリカにおける沖縄移民
講演形式
23
2001.11.8
沖縄タイムス社 児童虐待と心のケア
講演形式
24
2002.12.18
宜野湾市教育員会・琉球新報社 宜野湾市域の基層文化と自然環境
講演形式

地域調査報告講演会(2000年度〜2002年度)
日時
場  所
講 師
所 属
テ ー マ
2001.3.10
西表島・わいわいホール 宮城 邦治
里井 洋一
沖縄国際大学
琉球大学
西表島の自然とその活用上原村と人頭税賦課台帳
2002.3.19
西表島・離島振興総合センター 崎浜  靖
仲地 哲夫
南島研専任所員
沖縄国際大学
地図資料からみた西表島の村落近世八重山の村落と寄百姓
2003.3.14
石垣市大濱信泉記念館
多目的ホール
堂前 亮平
高橋 俊三
久留米大学
沖縄国際大学
南島のマチの成り立ち八重山の初等教育に用いられた『二十四孝』について

【点検・評価】
 研究成果を地域に還元することは、大学や研究所の当然の義務である。南島研では、公開講座と南島文化市民講座のほかに、調査対象地域で毎年、調査報告講演会を開いてきた。これまでのところ、講座終了後のアンケート調査からも、地元の人々や市民の評価は良好である。市民講座・調査報告講演会は、どのようなテーマを選択するかが重要であるが、それとともに、市民のニーズと研究者の関心をどのように重ね合わせるかが課題である。

【改善・改革方策】
  市民講座・調査報告講演会は、学際的な共同研究の発表の場になることが望ましいが、そこに至るまでには、まだ時間が必要である。しかし、各所員が講座を通して、これまで蓄積した研究の成果を、積極的に社会へ発信しようとする意思が強くなれば、講座内容もより充実したものになろう。

D 資料センターとしての役割
【現 状】
 南島研は、まだ小規模ながら、南島文化地域に関連する文献の収集を専門とする数少ない機関の一つである。蔵書は1万冊余であるが、ここ数年で前近代の琉球関係史料のマイクロフィルムや明治から昭和戦前期、戦後初期の沖縄関係の論文・エッセイ・紀行文などの掲載誌を収集することが出来た。
 2000年7月には、旧図書館の2階に南島研事務室・資料室を移し、資料整理も順調に進んでいる。また、宮城栄昌蔵書・大山朝常蔵書・窪徳忠蔵書(大学図書館と共用)、最近では松本三益蔵書、ラブレス・マルコ蔵書等も寄贈された。

【点検・評価】
 今後は視聴覚資料の収集・保存の対応策を検討しなければならない。物財的資料の収集保管にも配慮する必要がある。また外国語による沖縄関係の文献資料の収集にもつとめなければならないし、地図資料や戦後資料の収集も重点的課題といえる。コピーや復刻によらなければ入手できない資料も計画的に収集する必要がある。

【改善・改革方策】
 資料センターとしての役割は、南島研の中心的機能の一つであるため、目標には際限はない。これまでのように、沖縄・奄美関連の資料の収集につとめながら、研究者専用の資料センターとして独自の機能を保持していかなければならない。学外からの資料閲覧者が増加している現在、専門職員を配置して、貴重な文献資料を公開し、そして閲覧できるシステムの確立が急務である。

E 国際学術交流
【現 状】
 南島研の国際交流は、始まってから10年余になる。1992年2月11日に沖縄タイムス社と提携して、第14回南島文化市民講座(テーマ:「トートーメーと祖先崇拝」)を開催した。それは南島研が取り組んだ初めての国際学術シンポジウムであった。
 最近では、2001年6月に学術協定校である韓国・全南大学校湖南文化研究所との共同学術シンポジウムを全南大学校で開催した。その翌年の2002年には、本学において学術交流講演会を開催した。また、韓国・中国・日本を代表する研究所が参加する韓国木浦大学校島嶼研究所主催の国際学術シンポジウムにおいて、2001年・2002年と連続で南島研所員が参加している。

【点検・評価】
 南島研の国際交流が始まってから10年余と浅く、総括するにはデータが幾分少ないのが現状である。現在は、学問研究の進展のために有効と思われる国際交流を一歩一歩、積み重ねる段階であろう。国際交流が自己目的化して、そのためにロスが生じたり、ブレーキになることがあれば別であるが、私たち自身の閉鎖性を打破し、研究状況を改革するのにプラスになるのであれば、南島研としても、これまで以上に積極的に関わっていく必要があろう。

【改善・改革方策】
 今後、協定校である韓国・全南大学校湖南文化研究所、中国・福建師範大学中琉関係研究所との学術交流の進展が予想される。しかし、これらの事業を円滑にすすめるには、現在の事務体制では、一部の人間に仕事の負担が集中することが予想される。その点については、事務体制をどう確立させていくか、十分に議論していく必要がある。



第5節 産業総合研究所

研究活動
 産業総合研究所(以下、「本研究所」という。)は、本学の学術研究体制の整備・充実、並びに研究水準の高度化・研究活動の活性化を推進するという観点から、大学の本質的役割の一翼を担う研究機能を一層拡充・発展させるとともに、絶えず新しい分野並びに学際的・複合的分野へと研究領域を展開させていくことを目的として、本学の創立20周年の節目である1991(平成3)年4月に商経学部付属機関として設立された。
 本研究所の研究スタッフは、本学各学部の教員が兼任する「所員」と学外に籍を置く研究者等から成る「特別研究員」によって構成されている。2003年4月1日現在、所員は所長1名、副所長1名を含む計40名(うち専任所員1名)である。特別研究員は83名(更新54名、継続28名、新規1名)であり、その内訳をみると、大学教員45名(うち沖縄県外16名、国外9名)、その他(国・県・自治体職員、実務家など)38名となっている。
 産業総合研究所の研究活動は、@調査研究の実施、A研究会の開催、Bフォーラム等の開催、C調査報告書・研究叢書・紀要の発行、D資料収集の5つに大別することができる。それぞれの研究活動は、次の通りである。

@ 調査研究の実施
【現 状】
 本研究所の調査研究は、研究所所員に対して研究期間を明記した共同研究プロジェクトを公募し、所員総会において承認された後に実施されるという、プロジェクト方式を採用している。2000年度以降に行われている共同プロジェクトは次の通りである。
テ  ー  マ
調査研究
期間
参加者数
所  員
特別研究員
地域産業振興を目的としたエレクトロニック・コマースの有効な活用法についての基礎研究
2000〜2002
5
1
情報化と地域経済の発展
2000〜2002
5
0
沖縄県の国際的観光地への転換の為のマーケティング・流通戦略の研究
2002〜2004
3
0
eマーケットプレイスの有効的な活用と地域産業振興を目的としたeビジネスモデル構築のための基礎研究
2003〜2005
6
2
情報ネットワークと産業振興
2003〜2005
5
0
 他方、上述したプロジェクト方式のほかに、1997年度から本研究所所長が研究代表者となる研究所の独自研究が行われている。公募型のプロジェクト研究は、所員の研究活性化や研究レベルの向上などを主目的としているのに対し、本研究所の独自研究は沖縄の地域・産業界のニーズに合わせた課題解明を主目的として行われている。現在までの独自研究テーマは次の通りである。
テ  ー  マ
調査研究期間
沖縄県の地域特性の数量的評価
1997〜1998
甘味資源の地域経済に及ぼすインパクトと関係主体の認知構造の分析
(北海学園北見大学開発政策研究所との共同研究)
1999〜2000
沖縄における地域内格差と均衡的発展に関する研究
2001〜2003

【点検・評価】
 限られた資源の中で、研究体制の整備・充実を進めながら、国内外における調査研究に努めているところである。また、地域社会との連携を強化し、産官学の共同研究を推進するため、プロジェクトには学外の特別研究員(任期2年)の参加ができる体制になっている。

【改善・改革方策】
 学術の振興と産業社会の発展により一層寄与してゆくために、今後とも、所員及び特別研究員間の有機的連携をさらに強化しつつ、地域レベル、国レベル、国際レベルそれぞれの分野での調査研究の均衡を保ちながら、それらをより積極的に推進していく。

A 研究会の開催
【現 状】
 研究会は、研究スタッフ相互間での知識、情報、ノウハウの交換を通じて、研究スタッフの自己啓発と共同研究や学際的研究の基盤作りを目的として行われている。2002年度における研究会のテーマ及び報告者は次の通りである。
 
テ  ー  マ
報 告 者
第1回
情報文明学の必要性について 辻田忠弘(甲南大学教授)
第2回
食の安全性と食品流通のIT化戦略 松田友義(千葉大学大学院教授)
第3回
時価主義と法人税 成道秀雄(成蹊大学教授)
第4回
E-University 構想について 定道宏(星城大学学長)
第5回
経済構造の特徴―日本との比較 コラッド・モンテーニ(イタリア ボッコーニ大学教授)
第6回
中国の対外通商政策とFTA 真家陽一(JETRO外国調査部中国・北アジアチームリーダー代理)
第7回
「物語りとしての農村風景」の概念を用いたPCナビーゲート型調査システムの解釈 長谷部正(東北大学大学院教授)

【点検・評価】
 昨年度の研究会は、ほぼ例年通りの7回開催された。研究スタッフの多くは兼任であり、時間的制約が大きいことを考慮に入れると、研究会の量的拡大を目指すよりも、研究体制を整備・充実させ、質的向上を図る方が効率的であると考える。

【改善・改革方策】
 本研究所の研究スタッフは、本学各学部の教員が兼任する「所員」と学外に籍を置く研究者等から成る「特別研究員」によって構成されている。2003年4月1日現在における「所員」の構成をみると、商経学部37名、総合文化学部2名、法学部1名となっている。研究スタッフの多くが兼任であるため時間的制約が大きいが、「所員」については商経学部に偏りがちであることから、今後は他学部の教員に参加を求め、より学際的な研究会にしていきたい。
 また、研究会の効果的かつ効率的な運営を図り、実業界を含む広い分野の研究発表を促進していくために、情報関連機器や各種アプリケーション・ソフトの導入、外部データベースへの加入など研究基盤の整備を積極的に図りたい。

B フォーラム等の開催
【現 状】
 学術セミナーについては、他大学・研究機関、行政、業界団体から講師を招いて公開講座や研究会を開催してきた。1998年度以降、アジア経済研究所との共催で延べ3回講演会を開催した。
 他方、フォーラムについては、1992年度以来、地元新聞社との共催で毎年1回開催しており、企業、業界団体、行政、大学から基調講演者やパネリストを仰いでいる。過去5年間のフォーラムのテーマは以下の通りである。
1998年度(第 7 回) 島の航空輸送―規制緩和の時代を迎えて
1999年度(第 8 回) 南米―もうひとつの沖縄の産業社会・文化へのアプローチ
2000年度(第 9 回) 情報産業と沖縄―新産業形成の可能性をさぐる
2001年度(第10回) 沖縄におけるITベンチャーの可能性―韓国・札幌の成功事例に学ぶ
2002年度(第11回) 沖縄県における電子商取引(EC)の課題と展望

【点検・評価】
 フォーラムは、ともすれば学術分野に逼塞しがちな研究所の調査研究活動の成果を地域に還元できる最大の機会であり、また地域の課題を直接聴取できる機会であって、継続的・発展的に実施していくことには研究所の調査研究活動を充実させる上で極めて重要な意味がある。

【改善・改革方策】
 開催内容や方法の整備・充実を模索するとともに、地域ニーズに合致したテーマの開発を図っていく。また、北海学園北見大学開発政策研究所との共同研究で得た実績を足がかりに、他大学の付置研究所等との研究交流を積極的に進め、その成果を地域社会へ還元していきたい。

C 調査報告書・研究叢書・紀要の発行
【現 状】
 『産業総合研究調査報告書』は、前述のプロジェクトの調査結果が主体となっており、1992年度以降、毎年度末に発行され、現在までのところ11号を数えている。
 また、本研究所の独自研究の調査研究報告書として、『地域産業研究』を発行しており、現在までのところ4号を数えている。さらに、『地域産業研究』の集約版として、『地域発展戦略へのアプローチ』(2001年12月、泉文堂)、『地域特性の数量的評価と沖縄の様相』(2003年8月、泉文堂)を刊行出版した。
 紀要は、1993年度以降、毎年度末に発行されており、現在までのところ11号を数えている。過去五年間の掲載論文数をみると、1998年度10本、1999年度10本、2000年度14本、2001年度13本、2002年度11本を数えており、持続的・安定的に掲載論文数を確保している。
 なお、本研究所は、紀要及び調査報告書を県内の産業・経済団体等をはじめ、全国の大学及び研究機関など、総計430カ所弱の団体施設等に配布している。

【点検・評価】
 本研究所の発行する調査報告書・研究叢書・紀要における投稿内容をみると、定性的分析、定量的分析、経営学的分析、心理学的分析、情報工学的分析、資源・環境経済学的分析、地域の課題、国際関係、意志決定問題等、理論的・実証的かつ多面的な広がりをみせている。

【改善・改革方策】
 毎年度、着実に研究成果が報告・発表・刊行されてきており、今後ともその量的・質的な水準の維持・向上に努める。

D 資料収集
【現 状】
 本研究所が保管・管理する図書は、2003年4月1日現在、9,312冊、雑誌23種類である。

【点検・評価】
 本研究所が保管・管理する図書は、定期的に刊行されている国内や海外の各種統計書をはじめ、経済学、経営学、社会学、行政学、情報工学、環境経済学等多彩なものとなっている。

【改善・改革方策】
 今後は、蔵書数の増大する中で迅速かつ的確な図書・資料等の活用を可能にし、研究の効率化に資する観点から、図書・資料等のマルチメディア化を図り、併せて、それに対応するための情報関連機器等の整備を図ることが必要である。その一環として、本研究所の図書データベースを学内ネットワークにリンクさせ、学内でオンライン検索ができるように、継続して整備を進めていく。


第6節 沖縄法政研究所
研究活動
 沖縄法政研究所(以下「本研究所」)の研究スタッフは、沖縄国際大学各学部の教員が兼任する「所員」と沖縄国際大学外に籍を置く研究者から成る「特別研究員」によって構成されている。2003年3月現在、所員は所長1名、副所長1名を含む計27名(このうち専任所員1名)で、特別研究員は現在25名である。
 本研究所の研究活動は、事業計画委員会において年度毎、あるいは適時に計画が立てられ、所員会議の承認を経て行われる。主たる研究活動は、所員及び特別研究員が中心となって行う研究会及び講演会、また地元諸団体との共催による「沖縄法政研究所フォーラム」等の開催、紀要『沖縄法政研究』の発行である。また、こうした事業活動を報告する「沖縄法政研究所所報」も発行している。
 2002年度及び2003年4月までの研究・事業活動は次のとおりである(開催数はこれまでの通算である)。

【現 状】
@ 研究会の開催
 1) 第4回研究会(2002年7月19日)
  テーマ:「竹島の法的地位」
  報告者:緑間英士(特別研究員)
 2) 第5回研究会(2002年7月19日)
  テーマ:「法学部教育の課題と法科大学院をめぐる動き」
  報告者:徳永賢治(所員)
 3) 第6回研究会(2003年3月7日)
  テーマ:「政策評価の論点」
  報告者:佐藤 学(所員)
 4) 第7回研究会(2003年3月7日)
  テーマ:「労働者派遣法の課題」
  報告者:大山盛義(専任所員)

A フォーラムの開催
第2回公開シンポジウム(2002年10月23日)
  テーマ:「情報公開とまちづくり」
 *本研究所と八重山市長会との共催
  ○パネリスト
   前津榮健(所員)、朝崎?(特別研究員)、黒島健(石垣市教育委員会教育部長)、
太田守宣(司法書士)
  ○コーディネーター
   照屋寛之(所員)

【点検・評価】
 研究会や公開フォーラムといった活動は研究内容の中間報告及び研究成果を地域社会に還元するという趣旨で行われる。対象期間におけるこれらの活動は1997年度から2001年度までの活動状況に比して格段に活発になっているといえよう。また特許庁等が主催した知的財産権セミナーを後援したことに見られるように、研究会や講演会・フォーラムといった従来の活動形態に囚われることなく、沖縄法政研究所の設立趣旨に合致すると思われる機会を利用し大学及び地域に向けて学問的諸問題を提起した。

【改善・改革方策】
 本研究所の活動は以前に比べ活発化してきたとはいえ、比較した期間における活動そのものが低調気味だったことを考慮すると年4回の開催も特段多いとはいえない。また研究会における報告者の人選が「所員」に偏りがちである。今後、研究会の活発化・充実化を図るためには、所員・特別研究員の枠組みを越え、沖縄の法と政治及びそれらと近接する分野を研究しつつも県内外の研究者及び実務家に参加を求めることが必要である。
 同様に、講演会・フォーラムに関しても県内外の研究者・実務家等を招聘し学問的に幅を拡げた内容にする必要がある。

B セミナーの開催
 知的財産権セミナー(後援・2003年1月22日)
 特許庁、沖縄総合事務局、日本弁理士会が主催するセミナーを本研究所が後援し、
  沖縄国際大学内で開催した。
○テーマ「知的財産権の概要」
  講師:姫野圭一(野村総合研究所 情報・通信コンサルティング部上級コンサルタント)
○テーマ「IT社会と知的財産権」
  講師:谷口拓男(弁理士)

C 刊行物(紀要・所報)
【現 状】
 前述の如く本研究所は紀要として『沖縄法政研究』を毎年度1回発行し、所員・特別研究員の研究論文等の他、研究所が主催し開催した、シンポジウム・講演会等の模様も掲載している。昨年度は第5号(2003年3月)を刊行した。内容は以下のとおりである。
  ○論説
   井端正幸所員「政治の中の自治と分権」、大内義三所員「民訴法248条の女子年少者の死亡による
   逸失利益の算定」、佐藤学所員「米国政治の行方」
  ○研究ノート
   西原森茂所員「『命こそ宝』の思想」、徳永賢治所員「多元的法体制再考」
  ○資料
   シンポジウム「情報公開とまちづくり −情報の共有化をめざして−」、稲福日出夫所員
    「佐喜眞興英の中学時代と作品2題」、吉次公介所員「ナッシュ・レポート」沖縄法政研究所
    の事業報告等は「沖縄法政研究所所報」でなされる。昨年度は第10号(2002年10月)及び
    第11号(2003年3月)を発行した。

【点検・評価】
 研究紀要の発行等刊行物については、紀要『沖縄法政研究』及び所報「沖縄法政研究所所報」とも沖縄法政研究所創立以来、継続性・定期性が持続されている。

【改善・改革方策】
 研究紀要の充実は研究会その他の活動のそれと連動するため、まず研究会の活発化・充実化を図ることが先決となる。また同様に所員・特別研究員に限らず、沖縄の法と政治に関連する、あるいはそれに近接する領域を研究対象としている研究者に広く投稿を呼びかけることも必要であろう。

D 無料法律相談の実施
  沖縄法政研究所は事業活動の一環として「無料法律相談」を行っている。昨年度は5件の相談依頼があり、それぞれ専門分野の所員が相談に応じた。