沖縄国際大学 平成16年度 点検・評価報告書

序   章


大学の歴史と特色

 本学は昭和47年、沖縄が本土復帰した年の2月25日、「沖縄の復帰に伴う特別措置」による国庫補助金10億円と日本私学振興財団からの借入による4億4千万円の資金をもとに、既存の二つの私立大学旧沖縄大学及び旧国際大学を統合して開学した。校名の沖縄国際大学は前身の二つの大学名に由来する。それ以前の昭和25年に、琉球列島米国民政府は占領政策の一環として琉球大学を設立していたが、それは小規模で地域の教育ニーズには対応しきれなかった。こうして財団法人嘉数学園沖縄短期大学(昭和33年)と財団法人コザ学園琉球国際短期大学(昭和34年)が設立され、前者は昭和36年、後者は昭和37年にそれぞれ短期大学を併設した4年制大学として当時の琉球政府より設置認可された。
 昭和47年5月15日、沖縄の施政権は日本に返還され、大学も必然的に日本の大学設置基準を適用されることになったが、上記の二私立大学は基準に適合しないことがわかり、本土復帰を機に二つの大学は日本政府と琉球政府との支援を得て統合することになった。新生沖縄国際大学は、前身の大学から教員、事務職員、在学生、および教学・事務組織を引継ぎ(ただし、旧沖縄大学の場合は部分統合となる)、法学部、商経学部、文学部の3学部態勢で出発した。
 平成3年の大学設置基準の大綱化を契機として学部学科の改組新設やカリキュラム再編が本格化し、文学部第二部の募集停止(昭和50年)、短期大学部第二部の募集停止(昭和50年)、教養部廃止(平成7年)、短期大学部募集停止と商経学部、文学部の収容定員増(平成8年)、大学院設置(平成9年)、文学部改組と人間福祉学科設置(平成13年)、法学部改組と地域行政学科設置(平成14年)と続いた。商経学部が予定どおり、経済学部(経済学科と地域環境政策学科)と産業情報学部(企業システム学科と産業情報学科)に改組転換できれば、創立31年目にして3学部すべてが組織改革をしたことになる。
 本学の特色は、設立の背景にその原形を求めることができる。「設立趣意書」は新設大学をくり返し「沖縄の私立大学」と強調するとともに、その意義を沖縄の地域および地域住民のニーズに応えることに求めている。沖縄は日本の中でも地理的、歴史的、文化的に個性的であり、画一化に対してアイデンティティー危機を絶えず抱いてきた。こうした地域の自己主張を大切にし、それに応えていくことが本学の使命であり、文字どおり「地域に根ざし地域のための大学」として宿命づけられている。
 予想されるように、各学科のカリキュラムは地域密着型である。法学部法律学科のような全国共通性の高い学科でも、米軍基地と政治、米軍人軍属による犯罪など地域独自の取り組みが見られる。教材はいうまでもなく、教育方法も地域との結びつきを強化するよう心掛けており、教育実習、社会福祉援助技術現場実習、博物館実習、社会調査実習、インターンシップは地域との一体化の中で進められている。
 地域大学としての本学の一面は、在学生の95.2%が県内出身者(平成15年)で占められていることでもわかる(県外出身者は3.8%)。この実態は本学が地域の教育ニーズに応えているという半面、県外出身者を含めた多様な学習機会に欠けるという問題を露呈しているかも知れない。
 本学と地域との一体化は研究態勢にも見られる。本学は南島文化研究所、産業総合研究所、沖縄法政研究所を設置しており、各研究所はそれぞれ3学部に付置されるとともに南島地域の社会と文化、産業と経済、法律と政治を中心に調査研究を進めている。
 地域間交流は本学の重要な方針の一つである。地域志向と地域間交流は地域に根ざす大学の両面といえる。そもそも地域は孤立してありえず、地域間交流で自らを絶えず再生産しているのであり、本学は地域を外へ開かれたシステムとしてとらえ、国際化も積極的に推進している。「地域に根ざし世界に開かれた大学」とはその意味であり、それは国内および国外の合計10交流協定校への相互派遣という留学制度にも反映している。地域重視の教育研究と教育のグローバル化に対応した語学教育及び情報教育の重視は今後とも本学の基本方針となろう。
 平成9年、本学は大学基準協会の維持会員校に認定され、それを足場に外部刺激を受けながら更なる改革を目指しているが、その目標は地域ニーズに応えることを至上命令としながら個性を創造していくことに求められる。これは決して新規の試みではなく、本学にとっては発展的な継続事業といえるが、その場合、(1) 各学科のカリキュラムを標準修学年数4年に一度見直しを図る、(2) 地域ニーズと学生の個別ニーズに関する全学「共通尺度」を準備するなどの方策が必要である(尺度は「見直しの指針」といってもよい)。
 もう一つ取り組みが始まっているのは特殊技能の育成である。学生の中には入学時にかなりの程度芸能、スポーツ、文芸、美術などの特殊能力を有している学生が見られる。AO入試制度を導入してからこの傾向が強い。しかし現在のところ、入学後この特殊能力を育成する対策がとられていない。特別奨学金制度も含めて、特殊能力の発掘と育成に配慮する段階にきているといえる。